ひっそりと忍び寄る緑内障―減った神経は元に戻らない~睡眠時無呼吸症候群との関連も~

AI要約

緑内障の起源は古代ギリシャにさかのぼり、瞳が緑色に光ることから名前が付けられたとされる。

緑内障は眼圧を下げる治療が主流であり、眼圧が高いとは限らない。正常眼圧緑内障も多く存在する。

治療方法として点眼、レーザー、手術があり、レーザー治療も有効性が示されている。今後は点眼だけでなく低侵襲手術も選択肢になるかもしれない。

ひっそりと忍び寄る緑内障―減った神経は元に戻らない~睡眠時無呼吸症候群との関連も~

 緑内障について、最古の記述は古代ギリシャにさかのぼります。古代ギリシャ語で瞳が緑色(ないし青色)に光るという記載があり、それから緑内障の名前が付いたようです。現代の医学に照らし合わせると、いわゆる緑内障発作の所見と一致すると考えられています。

 日本では、江戸時代には緑内障が青底翳(あおそこひ)と呼ばれており、同じような認識でした。ちなみに、底翳とは眼球内部に悪いものが潜んでいるという考え方から来る名前であり、白内障は白底翳と呼ばれていました。いずれも瞳(瞳孔)の色の変化からの名前です。

 緑内障は目の神経がやせることで視野が徐々に欠けていく病気で、眼圧を下げる治療が行われます。眼圧を下げる治療をするからといって、必ずしも眼圧が高いわけではありません。

 多治見スタディという日本の緑内障疫学研究(病気がどのような割合で生じるかの研究)では、眼圧が正常範囲の緑内障が約9割という結果でした。一方、白人では正常眼圧緑内障が約3割程度しかいないとされ、きちんと論文や教科書を読み込まないと眼科医でさえ誤解している現状があります。

 減った神経は元には戻らず、治療をしっかり続けることで進むのを止めることが目標になります。

 眼圧を下げる治療としては点眼、レーザー、手術があります。点眼は毎日続ける必要があり、しっかりと継続することが大切になります。レーザーは最近、脚光を浴びている治療です。現在の日本の緑内障ガイドラインでは、レーザーは点眼の補助治療とされています。

 しかし、今年の4月に日本初の多施設共同研究の結果が出て、緑内障はレーザーから治療を開始しても有効と報告されました。レーザー治療は平均3年ほど効果が持続し、その間は通院は必要ですが、メンテナンスフリーになります。

 毎日きちんと点眼を行うことはなかなか難しく、特に忙しい世代にはお勧めかもしれません。手術も最近は低侵襲緑内障手術(MIGS)という概念が提唱され、目に負担の少ない手術が数多く行われるようになりました。緑内障治療と言えば、点眼しかないという時代は終わりつつあるでしょう。