パナが「自社専用LLM」--内部資料の学習で「会社の背景」理解したエース社員級AI開発

AI要約

パナソニックHDが独自日本語LLM「Panasonic-LLM-100b」を開発し、企業や業界特化の生成AI開発が加速する

Stockmark-LLM-100bをベースにしたこのLLMは、パナソニックの内部情報を学習して構築されており、エビデンスのない回答をしないように設計されている

AI開発が進み、コンテキストに特化した生成AIが重要視される中、自社専用のLLMが企業にとって非常に有益であることが示唆されている

パナが「自社専用LLM」--内部資料の学習で「会社の背景」理解したエース社員級AI開発

 ChatGPTなどの生成AIが注目を集めて久しいが、いざ業務に活用しようと思ってもうまくいかない──。そう感じるユーザーも少なくないはずだ。

 その理由の1つとして、生成AIのベースが公開情報で構成されており、ユーザーが所属する企業や業界に特有のコンテキストを深く理解していない点が挙げられる。

 そこでパナソニックHDは、自社の膨大な内部データを学習させた独自日本語LLM「Panasonic-LLM-100b」の開発に乗り出すと発表した。ストックマークが開発した独自LLM「Stockmark-LLM-100b」にパナソニックHDが保有する社内情報を追加学習させて構築する。モデルサイズは1000億パラメーターを想定し、企業が開発する自社専用のLLMとしては国内最大規模となる。

 ベースとなるStockmark-LLM-100bは、主にビジネス領域の知識に特化した日本語LLMだ。エビデンスのない回答はしない仕様で、ChatGPTのように「知らないことをさも知っているかのように答える子どものような嘘」を防止できるという。

 このStockmark-LLM-100bに、パナソニックの内部情報を学習させて構築するのが、前述のPanasonic-LLM-100bだ。まず商品や製品、社内の技術情報などを学習させ、今後はノウハウなどのコンテキストな情報を学習させる。用途は事業単位での業務マニュアル、社内の設計資料の参照に加え、将来的には顧客に対する応答システムの構築もめざす。

企業や業界特化の生成AI開発が加速へ

 Stockmark-LLM-100bを開発するストックマークで代表取締役 最高経営責任者(CEO)を務める林達氏は「今後は企業や業界に特化した生成AI開発が加速する」とコメント。公開データの学習で構築されたChatGPTなどの汎用生成AIでは、会社のコンテキストへの理解がないため、エース社員のようには使えないとも述べた。

 パナソニックHD テクノロジー本部 デジタル・AI技術センターで所長を務める九津見洋氏は「生成AIは、それぞれの事業領域における知識の深さやハルシネーション(誤った回答を堂々とする)の抑制が重要になってくる」とコメント。今回開発するLLMは、自社で開発中のマルチモーダル基盤モデルに統合し、パナソニックHD及び各事業会社におけるAI開発と社会実装を広く加速するとした。