生きるのがつらい、職場でいじめを受けている 「いのちの電話」相談員減少…20本に1本しか電話を取れていない

AI要約

「いのちの電話」の相談員不足が全国的な課題となっており、高齢化や新たな担い手の不足が原因である。

相談員の養成講座には定員割れが続き、相談員の動機や業務内容が紹介されている。

活動する相談員の大部分が70歳代であり、耳を傾けることの重要性や運営上の課題も浮き彫りになっている。

 深い悩みを抱える人たちの心に、主に電話でのやりとりを通じて寄り添う「いのちの電話」で、相談員の不足が全国的に課題となっている。高齢を理由にボランティア活動から身を引く人が増える一方、新たな担い手が集まらないためだ。電話がつながりにくい状況でも相談を受けられるよう、SNSを活用した試みも始まっている。(板垣茂良)

 「相談員が少ないと、受けられる電話の本数はどうしても限られてしまう」

 4月5日、千葉市内で行われた社会福祉法人「千葉いのちの電話」の相談員養成講座の開講式で、友田直人理事長(75)は、受講者に厳しい現状を訴えた。

 今年度は定員40人で募ったが、受講者は15人。相談の場面を想定した「ロールプレイング」などを通して傾聴の技術を来年3月まで学ぶ。

 同法人では、無償ボランティアの相談員が5交代制で24時間、電話の声に耳を傾けている。2023年度は、「生きるのがつらい」「職場でいじめを受けている」など、約1万8480件の相談が寄せられた。自殺をほのめかす人もおり、相談員は相手が電話を切るまで3~4時間、対応することもあるという。

 相談員になる人たちの動機は様々だ。定年後に社会貢献をしたいという人や、知人や芸能人の自死などを受講のきっかけに挙げる人もいる。相談員を8年務める千葉市の男性(68)は、「電話口で相手が『落ち着いた』と言ってくれるなど、気持ちが通じ合ったと思えた時、やりがいを感じる」と話す。

 同法人で活動する相談員は211人(今年4月現在)で、4割弱を70歳代が占める。毎年、15~20人が辞めていく。「耳が遠くなった」「夜間帯の相談に対応する体力がなくなった」「年金暮らしで、活動場所までの交通費の負担が厳しい」といった理由だ。

 一方、「人の話に耳を傾ける傾聴は地味な活動と見られがち」(同法人事務局)という面もあり、新たな担い手の確保に苦労している。電話は4台あるものの、相談員のやり繰りがつかず、2台で対応する時もある。「20本に1本しか電話を取れていない感じだ」と担当者は明かす。