増えるトラックとの事故。義務化されているのに自動ブレーキ搭載車が増えない謎

AI要約

トラックには自動ブレーキが義務化されており、新車では2021年11月以降全てのトラックに搭載されている。

乗用車よりも早く自動ブレーキが普及しており、更なる性能強化も進められている。

トラックの自動ブレーキ義務化には政府も積極的に取り組んでおり、安全対策が進められている。

増えるトラックとの事故。義務化されているのに自動ブレーキ搭載車が増えない謎

「なんでトラックには自動ブレーキついてないの?」って思っている人、多いはず。 実は私もそのひとりでした。

トラックに関連する痛ましい事故が相次いでいます。2024年5月6日に群馬・伊勢崎で対向車線に大型トラックがはみ出し、2歳の子どもをはじめとして一家3人が亡くなる死亡事故が起きました。その翌週には首都高5号線で大型トラックが渋滞中の乗用車に突っ込み、3人が亡くなる大事故が発生。

これらの事故に共通しているのは自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)が作動した形跡がなかったこと。「トラックに自動ブレーキがついていれば防げたのに」と思ったわけです。

ですが、よくよく調べてみると、国土交通省の資料によればトラックも乗用車同様に自動ブレーキが義務化(上の図参照)されています。しかも乗用車の自動ブレーキ義務化よりも早く、2014年から順次義務化されているというから意外すぎです。

22t超の大型トラックは、2014年11月以降に発表された「新型車」に自動ブレーキが義務化されています。20t超~22t以下のトラックは2016年11月以降、8t超~20t以下のトラックは2018年11月以降、3.5t超~8t以下のトラックは2019年11月以降の新型車から自動ブレーキが装備されているのです。

ここでいう「新型車」とは、フルモデルチェンジもしくは新しく誕生したモデルのこと。モデルチェンジ直後ではないけれど、ディーラーで新車として購入できる「継続生産車」は、22t超トラックは2017年9月以降、20t超~22t以下のトラックは2018年11月以降、8t超~20t以下のトラックは2021年11月以降、3.5t超~8t以下のトラックは2021年11月に販売されたモデルから、自動ブレーキが義務化されています。

つまり2021年11月以降は、新車として販売された3.5t以上のすべてのトラックに、自動ブレーキが標準装備されているのです。2017年までは自動車取得税の軽減、2018年4月までは自動車重量税の軽減などの税制特例もあり、政府もトラックの自動ブレーキの普及に注力しています。

ちなみに乗用車の新型車への自動ブレーキ装着義務化は2021年11月、継続生産車を含めたすべての新車に自動ブレーキが装着されるのは、2025年12月。トラックよりも4年も遅れているのです。さらに、輸入車の乗用車においては、新型車が2024年7月、すべての新車への義務化が2026年7月です。

現実的にはトラックは義務化されてないどころか、乗用車よりも先をいっているわけです。さらに2023年1月には、トラックの自動ブレーキ性能の強化が発表されました。停止状態の前方車両に時速70kmからでも衝突しないこと、時速20kmでの走行時に前方を横断する歩行者に衝突しないこと、といった厳しい基準が設けられています。この新基準の適用は新型車が2025年9月、継続生産車が2028年9月となっています。