『神護寺―空海と真言密教のはじまり』レポート 1200年の時を超えご本尊《薬師如来立像》が寺外初公開

AI要約

神護寺は空海の活動拠点として知られ、京都の名刹である。創建1200年記念特別展では、空海ゆかりの宝物や貴重な文化財が展示されている。

展示では国宝や重要文化財が多数登場し、神護寺に伝わる様々な寺宝が紹介されている。曼荼羅や寺経、彫刻など、神護寺の歴史や美術品が一堂に展示されている。

1200年の歴史を持つ神護寺の素晴らしさを感じることができる展覧会であり、展示作品のスケジュールも要チェックだ。

『神護寺―空海と真言密教のはじまり』レポート 1200年の時を超えご本尊《薬師如来立像》が寺外初公開

唐から帰国した空海の活動拠点となった京都の神護寺は、空海ゆかりの宝物のほか、貴重な文化財を多数保有する名刹として知られる。この神護寺の創建1200年と空海生誕1250年を記念する創建1200年記念 特別展『神護寺―空海と真言密教のはじまり』が、東京国立博物館で9月8日(日)まで開催されている。

京都市の北西部、高雄にあり、古くから紅葉の名所として知られている神護寺は、天長元年(824)、高雄山寺と神願寺の両寺院がひとつになり誕生した。高雄山寺は平安遷都を提案した和気清麻呂の氏寺であり、唐で密教を学んだ空海が活動の拠点としていた寺院でもあることから、神護寺には空海ゆかりの寺宝が数多く残されている。同展は、この神護寺に伝わる様々な寺宝を紹介するものだ。

展覧会の入口を飾るのは、神護寺貫主・谷内弘照の揮毫による大看板。そして、紅葉の名所である神護寺を描いた狩野秀頼による国宝《観楓図屏風》と、重要文化財《弘法大師像》が並ぶ。

第1章「神護寺と高雄曼荼羅」では、神護寺の宝物を時代順に紹介していく。国宝《金銅密教法具(金剛盤・五鈷鈴・五鈷杵)》は、空海が唐から帰国する際に持ち帰った法具だ。空海はことわざになるほどの筆の名手であるが、彼の書も国宝《灌頂暦名》などで見ることができる。

また、20世紀においては歴史の教科書に必ずといっていいほど掲載されていた国宝《伝源頼朝像》をはじめとする、通称「神護寺三像」も揃って展示される。

この神護寺三像に向かい合う形で展示されているのが、高さ4メートルに及ぶ巨大な曼荼羅像《両界曼荼羅(高雄曼荼羅)》の胎蔵界だ。曼荼羅とは、大日如来を中心に密教の世界、宇宙を図示したもの。近くで観賞すると金泥、銀泥で仏の姿が描かれていることがわかる。

第2章「神護寺経と釈迦如来像──平安貴族の祈りと美意識」では、神護寺経と呼ばれる「大般若経」などを紹介。お経を包んでいた経帙の美しさとあわせて観賞したい。

つづく第3章「神護寺の隆盛」では、神護寺の絵図などを、第4章「古典として神護寺宝物」では、江戸時代後半から明治時代にかけて神護寺の宝物が「古典」として注目されていた様子を紹介する。

そして、展覧会のクライマックスとなる第5章「神護寺の彫刻」では、神護寺の彫刻が一挙に展示される。現存する最古の密教仏像とされる国宝《五大虚空蔵菩薩坐像》は、神護寺では現在横一列で並んでいるが、同展では法界虚空蔵を中心に4体が前後左右に配置され、曼荼羅本来の配置で観賞できる。

神護寺の本尊である国宝《薬師如来立像》は寺外初公開。平安初期彫刻の最高傑作とされ、荘厳な雰囲気を漂わせている。神護寺ではなかなか目にすることができない横からの姿なども注目だ。

1200年もの長い歴史を持つ神護寺。その長い歴史を感じ、学び取ることができる素晴らしい機会だ。展示替えする作品も多いので、お目当ての作品がある場合はしっかりと展示スケジュールを確認しておこう。

取材・文・撮影:浦島茂世

<公演情報>

創建1200年記念 特別展『神護寺 ― 空海と真言密教のはじまり』

2024年7月17日(水)~9月8日(日)、東京国立博物館にて開催