子ども食堂で自衛隊が募集広報 防衛事務次官通達に抵触か

AI要約

自衛隊が札幌市内の子ども食堂に中学生以上の就職勧誘を行い、防衛事務次官通達に違反の疑いが浮上している。

広報官が子ども食堂に自衛隊勧誘のメールを送信し、資料やグッズを配布したが、活動は札幌独自のもので初めて。

子ども食堂の任意団体に対して、災害派遣や国防の重要性を説明する一方、自衛隊法に基づく地方協力本部の役割に疑義が投げかけられている。

子ども食堂で自衛隊が募集広報 防衛事務次官通達に抵触か

 自衛隊が昨秋、札幌市内の子ども食堂約80カ所に、中学生以上の就職勧誘を打診し、実際に約10カ所を訪れ採用案内を配布した。中学生への募集は保護者または学校の進路指導担当者を通じて行なうと定めた防衛事務次官通達に違反する疑いがある。

 昨年9月上旬、札幌の子ども食堂に、絵文字を使ったメールが相次いで届いた。

「×××(子ども食堂の名前)さまへ

 はじめまして、こんにちは。自衛隊札幌地方協力本部、広報官の■■■■(氏名)と申します。日頃から子ども食堂の活動お疲れさまですm(_ _)m

 今回メールさせて頂いたのは、×××さまに来られる中学生以上の子どもさんまたは保護者さまに対して、自衛隊で勤務するための紹介パンフレットや各種資料のほか、こどもさん向けのグッズなどをお渡しさせてもらえないかどうかの相談でした。

 自衛隊に入隊できるのは、18歳以上33歳未満の方となりますので、お仕事を探されている親御さん等も含め、就職先として自衛隊をご紹介できればと思っています。

 当初「子ども食堂北海道ネットワーク事務局さま」に、私どものこのような活動が、子ども食堂を運営される皆さまにご迷惑がかからないか問い合わせたところ、「募集活動について規制はしていません。それぞれの代表者さんの考えで運営されているので、直接相談してみてください」との回答を頂いたので直接連絡させて頂いた次第です。

 これらの件については日を改めて電話させて頂きますので、ご都合良い時間があれば教えて下さい。今後ともよろしくお願いします(^.^)(-.-)(__)

自衛隊札幌地方協力本部 広報官 ■■■■  090●●●●●●●●(携帯電話番号)」

「子ども食堂に? 協力本部が?」。取材で電話した防衛省報道室の男性官僚が、聞き返してきた。防衛省関係者も驚く活動だったようだ。

 自衛隊札幌地方協力本部(以下、札幌地本)は筆者の取材に対し、メールの文面は「相手がある」として認めなかったが、広報官がメールを送ったことは認め、こう説明した。

 まず、①札幌地本の職員が市内で子ども食堂を紹介するパンフレットを見つけ、自衛隊を知ってもらう機会を作れないかと考えた、②個別に当たる前に、子ども食堂の団体に問い合わせ段取りを踏んだ、③パンフレットに記載されていた約80カ所に9月頃、送信した、④了解の返答があった約10カ所に広報官が訪れて資料などを配布した──という。

 配布したのは、陸・海・空自衛隊の広報、自衛官募集のパンフレット6種と、空自の曲技飛行隊「ブルーインパルス」などのペーパークラフト(紙で作る模型)、缶バッジ、クリアファイル、ボールペンや消しゴムなどの文房具、ポケットティッシュなどのグッズ5種。

 1月の能登半島地震などを例に災害派遣の話を中心に、国を防衛する役割があることを説明したという。

 防衛省と札幌地本によると、子ども食堂への活動は、札幌独自のもので初めて。根拠法は自衛隊法29条。地方協力本部の仕事について「地方における渉外及び広報、自衛官及び自衛官候補生の募集」などを行なうと定めている。

 「こども食堂北海道ネットワーク」は道内の半数近い152の子ども食堂が加盟する任意団体。松本克博事務局長は「自衛隊から電話があり、それぞれの運営者の判断だ、札幌市のHPに連絡先が載っていると伝えた」と話す。