子どもの自殺が2022、2023年ともに500人を超えるも学校は硬直的。生徒の自己肯定感は低く、学力、運動能力、年齢でラベリングされ、序列化される現実

AI要約

2022年の厚生労働省の統計によると、子どもの自殺者数が過去最多となった。2023年にも500人を超えたままであるが、その原因は何なのだろうか。

本記事では書籍『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』より一部を抜粋・再構成し、極めて自殺率が低いとされる徳島県の海部町(現海陽町)の特徴を深掘りする。子どもを自殺させないための自殺予防因子とは?

子どもの自殺は、2022年に500人を超えて過去最多となった。なぜここまで自殺する子どもが増えているのだろうか。通常、増加要因を分析していくのが一般的だが、これまでそれによって成果が出ていないことから、今回は逆に、自殺の「少ない」地域の特徴を見ていきたい。

子どもの自殺が2022、2023年ともに500人を超えるも学校は硬直的。生徒の自己肯定感は低く、学力、運動能力、年齢でラベリングされ、序列化される現実

2022年の厚生労働省の統計によると、子どもの自殺者数が過去最多となった。2023年にも500人を超えたままであるが、その原因は何なのだろうか。

本記事では書籍『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』より一部を抜粋・再構成し、極めて自殺率が低いとされる徳島県の海部町(現海陽町)の特徴を深掘りする。子どもを自殺させないための自殺予防因子とは?

子どもの自殺は、2022年に500人を超えて過去最多となった。なぜここまで自殺する子どもが増えているのだろうか。通常、増加要因を分析していくのが一般的だが、これまでそれによって成果が出ていないことから、今回は逆に、自殺の「少ない」地域の特徴を見ていきたい。

そこに自殺の予防手段を見出すことができるのではないかという思いからだ。

岡檀・一橋大学経済研究所客員教授が書いた『生き心地の良い町』では、全国でも極めて自殺率の低い「自殺〝最〟希少地域」である、徳島県南部の太平洋沿いにある小さな町、海部町(現海陽町)を徹底的にフィールド調査し、5つの自殺予防因子をまとめている。

海部町では、赤い羽根募金を募っても「何に使われるかわからないものに金は出さない」と一蹴されたり、高齢者を地域の老人クラブに勧誘しても「俺はいい」と断られたりと、周辺地域の中で募金額や加入率が最も低いという。

しかし、それを咎める人もおらず、それぞれが自由に選択して、生きている。ともすると、こうした田舎町では、同調圧力が強く、勝手な行動を取ると浮いてしまう。しかし海部町では、そうした空気が一切ないという。

特別支援学級の設置についても、近隣地域の中で海部町のみが異を唱えており、設置に反対する理由として町会議員はこう説明する。

「他の生徒たちとの間に多少の違いがあるからといって、その子を押し出して別枠の中に囲いこむ行為に賛成できないだけだ。世の中は多様な個性を持つ人たちでできている。一つのクラスの中に、いろんな個性があった方がよいではないか」

また住民へのアンケートでは、「あなたは一般的に人を信用できますか」という質問に対し、「信用できる」と答える人の割合が他の町より高く、「相手が見知らぬ人である場合はどうですか、信用できますか」という質問に対しても、信用度はほとんど下がらなかった。

つまり、相手が身内であるかよそ者であるかによって大きく態度を変えない、排他的傾向がより小さなコミュニティであると解釈できる。