陸自、防災訓練の中核に 徒歩12キロ、救援物資輸送も 奄美市

AI要約

奄美市での県総合防災訓練では、自衛隊が災害対応の訓練を行い、特に陸自奄美警備隊が中心的な役割を担った。

隊員は徒歩で救援物資を運ぶ訓練などを実施し、地元での活動を経験した。

徒歩輸送訓練や被害状況調査など幅広い活動を通じて、訓練の重要性を確認した。

陸自、防災訓練の中核に 徒歩12キロ、救援物資輸送も 奄美市

 26日に奄美市であった鹿児島県総合防災訓練では、災害対応も重要な任務とする自衛隊が多方面に展開した。特に陸自奄美警備隊(奄美駐屯地・瀬戸内分屯地)の隊員は各所で中心的な役割を担った。道路寸断を想定し、救援物資を徒歩で運ぶ訓練も実施するなど、存在感を見せた。

 奄美市での県総合防災訓練は2013年以来、11年ぶり。奄美大島の駐屯地・分屯地は19年春開設で、地元常駐の陸自隊員が同訓練に参加したのは初めて。訓練には100人以上が参加した。

 徒歩による輸送訓練は、地震によって避難所までの道路が荒廃し、車両による輸送が困難になったとの想定。今年1月の能登半島地震では同様の事態が発生し、実際に展開された。

 徒歩輸送訓練には、普通科中隊の男性隊員15人が参加した。行程は名瀬大熊の奄美駐屯地から避難所が開設された名瀬長浜町の奄美川商ホールまでの約12キロ。各隊員は水や携行食など約20キロの救援物資を背負い、午前7時50分に出発。途中2カ所での休憩を挟み約3時間かけて移動し、時折降る雨をついて物資を届けた。

 休憩箇所では自衛隊OB組織の隊友会奄美支部が差し入れなどで激励。叶秀光支部長(76)は「災害支援も日頃の訓練が大事。災害現場で今回の経験を生かしてほしい」と話した。

 徒歩訓練に同行した奄美駐屯地の広報担当は「災害で道路が寸断された場合、徒歩や船でしか輸送ができない。隊員は、訓練で20~30キロの装備を背負っており、災害時には組織的に運べる利点がある」と語った。

 奄美警備隊は奄美駐屯地へのSCU(広域搬送拠点臨時医療施設)設置、被害状況の調査、被災者の救出・救助、道路寸断箇所の復旧など幅広い訓練に人員と機材を投入した。

 訓練を終え、奄美警備隊長兼奄美駐屯地司令の長谷川健1佐は「徒歩訓練では市内の地形をより理解でき、激励の声を受け士気も上がった。奄美警備隊は最後のとりでと思っている。災害発生時には一人でも多く救助し、地域の皆さんが困ったときにこそ力を発揮できるよう、日々訓練しなければならないと改めて実感した」と総括。

「各機関が現場で収集した被害状況を一元的に共有できるシステムと、情報収集、患者輸送、報道など多様なヘリやドローンが行き交う空域の統制が必要と感じた。災害が起きたとしても中国軍の動きは監視しなければならず、国防への対応も欠かせない。さまざまな調整が必要となるが、その3点が今後の課題と思う」と述べた。