石川に特別警報 復興進まぬ被災地に無情の大雨 仮設住宅水没 死者、行方不明者も「なんで能登ばかり…」

AI要約

石川県能登地方で21日、前線や低気圧の影響で線状降水帯が発生し、記録的豪雨による災害が発生した。主な被害は土砂崩れや家屋倒壊、川に流された行方不明者などが報告された。

珠洲市や輪島市などで大雨の影響で豪雨が記録的な量に達し、被害が拡大。被災地で復旧作業をしていた作業員が行方不明となり、他の住民や作業員は避難を余儀なくされた。

地震から立ち直りつつある能登地方での豪雨被害により、被災地では避難や救助活動が続いている。政府や自治体、関連機関が協力し、被害の拡大を抑えるための対応が行われている。

 石川県能登地方で21日、前線や低気圧の影響で線状降水帯が発生し記録的豪雨となり、珠洲市で土砂崩れによる家屋倒壊で下敷きになり1人が死亡、輪島市など3市町で3人が川に流され行方不明となった。

 元日の能登半島地震でコンクリートが崩落した輪島市の国道249号中屋トンネルでは、豪雨の影響で土砂が流出。復旧工事を進めていた作業員3人が安否不明となった。トンネル内には、他に住民と作業員計27人が大雨から避難していたが、この27人は全員無事。トンネルは25日に片側1車線での通行再開を控えていた。輪島市の坂口茂市長は県の災害対策本部の会議で「市内の行方不明者が10人に上る」と述べた。

 24時間雨量は輪島市で300ミリ、珠洲市で200ミリを超え、いずれも地点ごとの観測史上1位を大幅に超過。石川県内の12水系16河川で氾濫を確認。住宅の床上・床下浸水、集落の孤立も続出。県は6市町に災害救助法の適用を決め、自衛隊の派遣も要請した。

 濁流は、能登半島地震の被災者が身を寄せる仮設住宅にも流れ込み、輪島、珠洲両市の計8団地で床上浸水が確認された。地震で輪島朝市近くの自宅が全焼し、市内の仮設住宅で70代の両親と暮らす蕨野敬さん(46)は友人から「避難を」と連絡を受け、高台の中学校に車を走らせた。くるぶし近くまで浸水している場所があり「地震の後ということもあり、被害状況がどうなっているのか」と不安そうに話した。

 この日、気象庁が5段階の警戒レベルで最高の大雨特別警報を出した輪島市、珠洲市、能登町は、いずれも能登半島地震で被害が大きかった地域。自宅が床上浸水し、流木で壁がゆがんだ輪島市の会社員吉村達也さん(60)は「地震よりひどいかもしれない」とつぶやいた。復旧が進んでいた田畑も水に沈み、何が植えられていたのか全く分からない状態。ネット上には「なんで能登ばかり…」「また振り出し」など嘆きの書き込みがあった。

 地震からの復興が進まない中、今度は水害に見舞われた能登地方。台風14号から変わった温帯低気圧はきょう22日、日本海から日本の東に向けて進み、東北から九州で大雨になる恐れがある。気象庁は石川県では22日昼前まで低い土地の浸水、河川の増水・氾濫に最大級に警戒、土砂災害に厳重に警戒するよう呼びかけている。

 ≪首相が対策を指示≫岸田文雄首相は、政府一体で災害応急対策に取り組むよう関係省庁に指示。林芳正官房長官は、立候補している自民党総裁選関連の視察日程を中止し、官邸で被害状況の報告を受けた。政府は午前、内閣危機管理センターに設置していた情報連絡室を官邸連絡室に改組。午後には官邸対策室に再格上げして情報収集と警戒に当たった。

 ≪地震から8カ月余…がれき残る中≫地震による爪痕が残る中での豪雨となった。仮設商店街や住居などが整備されつつある中ではあったが、がれきの対応が進んでいない状況。被災した家屋を自治体が所有者に代わり解体・撤去する「公費解体」を巡り、今月19日には岸田首相が液状化の被害が出た内灘町を視察した。来年10月の作業完了を目指し、取り組みを加速させると説明。今年中に復興計画を策定できるよう支援する考えを示していた。

 ≪泉谷しげるコンサートを中止≫シンガー・ソングライターの泉谷しげる(76)が、珠洲市で開催予定だった無料コンサートを中止した。大雨特別警報を受けての判断で、すでに現地入りしていた泉谷は「珠洲に向かっていたが、凄い雨で赤土も盛り出ていて土砂災害になりかねない、電波も止まるような状況だった」と振り返った。同コンサートは能登半島地震の被災者応援を目的としていた。