静岡市清水区の草薙龍勢花火 今も脈々と 希少な伝統技術継承 住民ら準備に汗

AI要約

草薙地区に位置する草薙神社は日本武尊を祭る神社であり、龍勢花火の継承地として知られる。

毎年9月20日以降に保存会が龍勢花火を打ち上げ、地元小学校での出前授業なども行っている。

花火の製作や打ち上げ準備は保存会の会員約150人が行い、今年は15本の花火が打ち上げられる予定。

静岡市清水区の草薙龍勢花火 今も脈々と 希少な伝統技術継承 住民ら準備に汗

 静岡市清水区の西、日本平のふもとに位置する草薙地区。地区にある草薙神社は日本武尊(やまとたけるのみこと)を祭る神社として造られたとされ、昨年創建1900年を迎えた。草薙神社龍勢花火は全国でも数少ない龍勢花火の継承地であり、県指定無形民俗文化財に選ばれている。近年は高層マンションなど近代的な街並みが印象的だが、古くから住民に親しまれ、大切にされているものも多い。

 草薙神社龍勢花火は毎年一度、9月20日の草薙神社例大祭以降の休日に保存会が打ち上げを行っており、起源は1600年代後半から1700年代前半ともいわれる。保存会は地元小学校での出前授業にも出向くなど、伝統の龍勢花火継承にも取り組む。

 打ち上げに向けた準備は、8月第1日曜の「竹取神事」を経て本格化する。打ち上げ場所の整備とともに、主に頭(がわ)、吹(ふき)、尾の3部分から成る構造の花火を支部ごとに製作する。

 頭の部分には点火の時間差を生む導火線や、ふわりと落ちるようにするための落下傘などが仕込まれる。外側には支部によって、絵などをデザインする場合もある。

 花火のロケット部分である吹に黒色火薬を詰める作業は、会員の多くが「一番大変」と口をそろえる工程だ。3キロの火薬を150グラムずつ竹筒に投入して打ち固めた後、カチコチに固まった真ん中にきりで穴をあける。「何時間もかかって手にまめができる」と苦笑いする。

 龍勢のバランスを取る役目を果たす尾竹は、節をそいだり、皮を剝いだり、乾かしたりすることで、打ち上げ時には6キロになるよう時間をかけて調整する。

 現在保存会の会員は約150人。うち10人ほどが女性だ。古賀寛子さん(48)は「子どもの時から見ていたが、まさか自分が関わるとは思わなかった」と振り返り、「打ち上がった瞬間、ちゃんと成功したときが本当に面白い」と魅力を語る。

 今年は9月22日に開催予定で、8支部が計15本を打ち上げる。保存会の伊藤幹雄会長(68)は「受け継いできた有度地区の伝統文化を長く続けていきたい」と話す。会員らも「呼び出し口上の終わりと同時にまっすぐ上がる龍勢の勢い、音、高さを見てほしい」と準備に汗を流す。