口上(9月15日)

AI要約

「啖呵売」の歴史や特徴、今日の問題点について紹介されている。

バナナのたたき売りを通じて、消費者を騙す広告手法の問題点も取り上げられている。

消費者を騙す手法と、伝統的な啖呵売の違いを考察する。

 「高くて良いのが富士の山、低くて良いのが人の腰…」。流れるような口上が楽しい。巧みな話術で人を引きつけ、路上で商う「啖呵売[たんかうり]」。バナナのたたき売りは代表格だろう▼発祥は北九州市の門司港。明治時代、台湾バナナが大量に荷揚げされた。海送中に熟し出す房があった。傷む前に、できるだけ早く売りさばいて換金しようと始まったという。独特の節回しや威勢の良いかけ声で、多くの通行人の足をとめる。今は伝統文化として地元の団体が継承し、観光客の人気を呼ぶ▼こちらの「たたき売り」には乗せられまい。「在庫残りわずか」「割引はあと1分だけ」…。通販サイトでうその表示をして購買心をあおる広告「ダークパターン」が増えている。全国で被害が拡大し、県消費生活センターにも「焦って契約してしまった」との相談が複数寄せられている。政府は消費者白書で警鐘を鳴らし、消費者庁が実態調査に乗り出した▼人の心理を巧みに操り、誤った判断に誘導する。ユーモアや名調子とは無縁の所業だ。バナナのたたき売りは、芸や人柄に魅力を感じるからこそ、財布のひもが緩む。日ごとに増える悪どい商法をたたく口上はないものか。<2024・9・15>