新型コロナの教訓は生きたか?南海トラフ地震臨時情報で混乱した夏休み、政府が検討すべき“狼少年”にならぬ伝え方

AI要約

南海トラフ地震臨時情報が初めて発表された。南海トラフ地震とは100~150年間隔で発生する大規模地震であり、前回の発生から70年以上が経過していたため、2017年から関連する情報提供が始まった。

南海トラフ地震の被害想定は非常に甚大であり、静岡県から宮崎県にかけてで震度7が想定される他、大津波の発生も予測されている。

南海トラフ地震に備えるため、異常な現象が観測された場合には「南海トラフ地震臨時情報」が発表され、特別な注意が呼びかけられる。8月8日の地震では「巨大地震注意」が発表され、未だ調査終了していない。

 (西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)

■ 初めて目にした「巨大地震注意」の臨時情報

 今夏、南海トラフ地震臨時情報が初めて発表された。

 8月8日の日向灘を震源とする地震がその契機となった。気象庁によれば、南海トラフ地震とは、「駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域として概ね100~150年間隔で繰り返し発生してきた大規模地震」だとされている(気象庁「南海トラフ地震について」)。

 同庁の同サイトによれば、「前回の南海トラフ地震(昭和東南海地震(1944年)及び昭和南海地震(1946年))が発生してから70年以上が経過し」たことから、2017年から「南海トラフ地震に関連する情報」の提供を開始したという。

 南海トラフ地震で想定されている被害は凄まじい。

 気象庁によれば、「南海トラフ巨大地震がひとたび発生すると、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があるほか、それに隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱の強い揺れ」や「関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の襲来」を想定しているのだという(気象庁「南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ」)。

 このように想定される災害がもたらす人的、社会的、経済的被害はあまりに甚大であるがゆえに、精度の高い地震予知が現実的には困難である以上、事前的対応や予防的措置を含めた社会全体での総合的な対応と備えが必要であることは論をまたない。

 南海トラフ沿いで「異常な現象」が観測されるなどした場合には、2種類の情報を提供することが定められている(気象庁「南海トラフ地震に関連する情報の種類と発表条件」)。

 それが「南海トラフ地震臨時情報」と「南海トラフ地震関連解説情報」だ。前者の発表は「マグニチュード6.8以上の地震等の異常な現象を観測した後、5~30分後」ということになっている。

 さらに「南海トラフ地震臨時情報」には4つのキーワードが付されることになっている。「調査中」「巨大地震警戒」「巨大地震注意」「調査終了」である。

 そして8日の地震を通じて我々が初めて目にしたのが「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」であった。この「巨大地震注意」は「政府としての特別な注意の呼びかけ」として扱われ、8月15日までの一週間継続した。なお本稿執筆時点の現在でも「調査終了」には至っていない。