「農繁期」「子育て」両立させるには? コミュニティー、行政を頼って

AI要約

農家の子育てと農業の両立について取材。

矢野智美さんの取り組みや地域の支援を紹介。

愛媛県八幡浜市の子ども教室も紹介。

「農繁期」「子育て」両立させるには? コミュニティー、行政を頼って

 農村で子育てに励む農家を取材する際に、農繁期にどのように両立しているのか気になっていた。農家ならではの工夫があるのか、もしくは行政・JAの支援があるのか。夏休み真っ盛りの8月にヒントを探ると、農村ならではの助け合いのコミュニティーや、放課後に子ども教室を手がける産地の支えなどが見えてきた。

 繁忙期と農閑期の業務量に差がある農業は、子育てとの両立が難しいとされがちだ。2021年にパソナ農援隊(東京都港区)などが女性農業者を対象にした調査で、子育て支援に求めるサービスとして「土日・祝日も預けられる施設やサービス」「一時的に預けられる施設やサービス」が上位を占めた。

 「完璧を求めず、両立しようと思わないことが私の秘訣(ひけつ)」。中山間地が広がる広島県安芸高田市の女性農業者・矢野智美さん(37)にこつを尋ねると、意外な言葉が返ってきた。矢野さんはフィリピン人の夫と水稲や葉物野菜を9・3ヘクタール栽培しながら、0、3、8、9歳の4人の育児に奮闘中だ。

 就農4年目の矢野さんは、農村社会ならではの特徴を子育てに生かす。夫が将来的に水稲で就農を目指していたことから、同市へ2019年に移住。行政のサポートや子育てに理解のある地域住民に囲まれ、農業と育児を両立させる。

 農繁期を中心に、作業時間が足りなくなると活用するのが、同市の「ファミリー・サポート・センター事業」だ。事業に登録する会員同士で助け合い、預かり保育や保育園の送り迎えなど幅広く対応する。ママ友達2人と登録し、互いに協力する。日中預かりの負担料金は土・日曜、祝日を含め、1時間当たり300~350円。生後6カ月から小学校6年生まで預けられる。矢野さんは多い月で20時間以上利用する。

 放課後の小学生を預かる「子ども教室」を農繁期に開校し、温州ミカン産地を支えるのが愛媛県八幡浜市だ。子どもを持つ地元生産者から要望が高く、家族総出で収穫に励む繁忙期(10~12月)限定で開く。

 子ども教室は、早生ミカンの生産者が多くいる川上地区と真穴地区で開く。小学生の児童が対象で、午後2時半から午後6時まで預かる。昨年度は低学年の児童を中心に川上地区で15人、真穴地区で38人が利用し、保護者の評判も高いという。

 同市が元保育士や社会福祉協議会などと協力し、地元公民館や小学校で預かる。本年度も両地区で開校を予定する。同市子育て支援課は「農家を支えられるよう続けていきたい」と力を込めた。