「就活100社落ち」議員が挑む氷河期対策 国民民主党・伊藤孝恵氏に聞く【政界Web】
1997年、100社もの会社に落ちた経験をきっかけに、国民民主党の伊藤孝恵参院議員が就職氷河期世代の支援策を検討するプロジェクトチームを立ち上げた。
伊藤氏は氷河期世代の苦労を共感し、就活時の過酷な経験や正社員での不本意な就職での苦しみを語った。
政府の取り組みに対し、氷河期世代の実態や政策の評価が不十分であり、今後の支援策の見直しが必要であると訴えた。
「私が100社もの会社に落ちた1997年…」。3月28日の参院本会議。国民民主党の伊藤孝恵参院議員が、2024年度予算の反対討論でこう切り出すと、議場から笑い声が起こった。これが契機となり、就職氷河期世代の支援策を検討する党プロジェクトチーム(PT)を立ち上げ、自ら座長に就任。独自アンケートや有識者ヒアリングを重ね、6月に政策提言をまとめた。氷河期世代に対し、政治は何ができるのかを聞いた。(時事通信政治部 大塚淳子)
―議場の反応をどう受け止めた。
30年前と今の日本を比較する中で、話の導入として私の就職活動に触れただけだったため、反応があるとは想定していなかった。笑い声や、「自分は全部受かったよ」という話し声が聞こえ、動揺した。私にとって当たり前の経験が、経験していない人には笑われ、大げさなものに聞こえるということに驚いた。
―それがどう党内議論につながったのか。
X(旧ツイッター)に投稿したところ、ものすごい反響があった。応援メッセージが日増しに多くなり、「共感してくれてありがとう」では終われないと思った。玉木雄一郎代表に相談し、党の政策にして返すことにした。
―自身の就活はどうだった。
田舎の中堅女子大だったので、私の周囲は厳しかった。履歴書を顔に投げつけられたこともあった。母が「皆と同じ紺のスーツを着る必要はない」と言って買ってくれたクリーム色のスーツで面接に行けば、「デートの帰りに来たのか」とさげすまれた。本当は教員になりたかったが、採用倍率は20倍。現実を思い知らされた。
―伊藤氏にとって氷河期とは。
人災だ。景気後退の段階で、若者が上の世代の雇用を守るための調整弁に使われた。自己責任と言われがちだが、そうではないと声高に言いたい。
―党独自でアンケートを実施した。
私は奇跡的に正社員として採用されたが、それに同じ氷河期世代として共感できないというメッセージも届いた。そこで、実態を把握するためにアンケートを取り、1000人弱から回答を得た。
その結果、氷河期世代の不遇を感じている人には女性や正社員も多く、「男性、非正規、引きこもり」といった勝手なイメージにとらわれていたと気付かされた。正社員になったものの、不本意な就職で体や心を壊した人もいた。「かわいそうだ」「正社員にしてあげる」という上から目線ではいけないと強く感じた。
―政府の取り組みの課題は。
雇用保険を財源に、正社員を増やすことをゴールにしているため、当事者とのアンマッチ(ずれ)が起きている。誰が何に困っているのかという実態調査と、過去5年間の政策評価をしていないことが一番の問題だ。政府は「一定の成果を挙げた」と断言しているが、政策がこの層に届いているのか疑問だ。
―政府は今年の経済財政運営の基本指針「骨太の方針」で、25年度以降は氷河期世代に絞った対策を行わず、中高年向けの政策を通じて支援するとしている。
政府が支援をやめると宣言したようなものだ。氷河期世代の人たちをまなざしに入れたまま、「やめては駄目だ」「この政策なら有効だ」とノックし続けないと、また忘れられてしまう。