AI時代に向けて「時間と手間をかけて自分に問い、大切なものを見極める」 恐山の禅僧が説く「人生のテーマ」の見つけ方

AI要約

人生で大切にしたいテーマを見つけることの重要性について語られた記事。

自分の生き方や優先順位を見誤らないためには、テーマを見極める必要がある。

テーマは自ずと見つかるものであり、待つ姿勢が大切だというメッセージ。

AI時代に向けて「時間と手間をかけて自分に問い、大切なものを見極める」 恐山の禅僧が説く「人生のテーマ」の見つけ方

自分が人生で何を大切にしたいのか。人は案外わかっていないもの。しかし、それを見つけることこそが生きる指針となり、強靭な生き方へとつながります。

そんな「人生のテーマ」に出合うための鍵とは。それは、自分という存在を捉え直すこと──。

青森県にある恐山菩提寺の院代(住職代理)を務める南直哉(じきさい)さんに、激動の時代に働くビジネスパーソンに向けて生きるヒントを伺いました。

【南直哉 JIKISAI MINAMI】

禅僧、恐山菩提寺院代、霊泉寺住職

1958年長野県生まれ。

1984年、出家得度。曹洞宗大本山・永平寺での修行生活を経て、2005年に恐山へ。

2018年、『超越と実存』(新潮社)で小林秀雄賞受賞。

著書に『老師と少年』『恐山 死者のいる場所』(ともに新潮社)、『正法眼蔵 全 新講』(春秋社)など。

最新作『苦しくて切ないすべての人たちへ』(新潮社)が発売中。

以前、「私の生きがいは妻です」と言い切る男性に出会いました。本気か!?と疑いましたが、冗談を言っているようにも見えません。大企業に勤めている彼は「妻が嫌がるから」という理由で、転勤を断ったとか。

それが響いたのか、「そこそこの昇進しかできなかった」そうです。しかし、笑顔で話すその姿は、さほど悔やんでいるようには見えませんでした。

生きるテーマが「妻を大切にすること」だった彼は、仕事での大成功はなかったかもしれません。しかし、それなりに充実した人生だったでしょう。

このように、「これだ」と思えるテーマがあれば、優先順位を見誤らず、自分の本意に沿った生き方ができます。

テーマを見つけるとは、自分が何を大切にして生きたいのか、誰を大事にしたいのか、それを見極めること。

これまで見たこともない流れに巻き込まれ、動けずにいる。そんな今、まさに必要なのは、そのテーマを探す作業です。

若い頃は、仕事を最優先すべきテーマとして、がむしゃらに取り組んだ時期もあったかもしれません。

しかし、40~50代ともなると、仕事では、ある程度の結果が出ています。正直な話、この先、圧倒的な成果を挙げて大出世することがテーマにはなりにくいでしょう。そうなった時、何がテーマになるのか。

家族を大切にしたいなら、それでもいいし、没頭できる趣味があるのならそれもよし。もし「これだ」と言えるものがなければ、時間をかけて考えてください。

テーマとは「降ってくるもの」であり、生きていく中で、おのずと出てくると思っているといいでしょう。ですから、「待つ」姿勢が大切です。