ソウルで〝作られた反日〟に遭遇 韓国記者に尋ねると「事実書けば編集長からOK出ない」 国際舞台駆けた外交官 大江博氏(8)

AI要約

駆け引きの舞台裏が明かされる外交官の世界での経験。

在韓日本大使館での充実した勤務や重要課題解決の取り組み。

元慰安婦問題を扱う際の微妙な立場やその後の展開。

ソウルで〝作られた反日〟に遭遇 韓国記者に尋ねると「事実書けば編集長からOK出ない」 国際舞台駆けた外交官 大江博氏(8)

公に目にする記者会見の裏で、ときに一歩も譲れぬ駆け引きが繰り広げられる外交の世界。その舞台裏が語られる機会は少ない。ピアニスト、ワイン愛好家として知られ、各国に外交官として赴任した大江博・元駐イタリア大使に異色の外交官人生を振り返ってもらった。

■本省から電話、「君はどう思う?」

《1989年から約2年半、在韓日本大使館で勤務した》

ソウルでの勤務は充実していました。欧米など主要国との方針は通常、本省が決め、現地の大使館に意見を求められることはあまりない。しかし韓国の問題では、韓国国内の反応が政策決定に重要な要素となるため、意見を求められることが良くあったのです。

田中均北東アジア課長(後に外務審議官)や、谷野作太郎アジア局長(後に中国大使)から1等書記官の私に「君はどう思う?」と電話が掛かってきた。とてもやりがいを感じました。

■韓国の3点セット

《大使館では、韓国語に堪能な専門職の館員が内政を担当し、自身は日韓関係を担当した》

在日韓国人3世の法的地位問題▽広島・長崎で被爆した在日韓国人への対応▽第二次大戦後、サハリンに残され無国籍となった朝鮮人への対応ーが主要課題。3点セットと呼ばれました。盧泰愚(ノ・テウ)大統領はこの3つが解決すれば、日韓の過去の問題は終わり、との立場を取っていました。

当時、元慰安婦問題があったとはいえ、両政府の協議対象にはなっていませんでした。協議対象になると、元慰安婦が自身の身元を多くの人々に知られることになり、嫌ったためです。

私が帰国した後、この問題が両国間の大きな問題になりました。〝トカゲの尻尾切り〟ではありませんが、日本国内では韓国大統領の約束にも関わらず、この問題を扱うと、他の問題が次から次へと出てくると懸念する人もいました。「慰安婦問題は両国の歴史に関する最後の問題になるのでは」というのが私の意見でした。その後の歴史を見ると、そうなりませんでしたが…。

■屈折した感情の源