PTAは不要、「解散決断」後に意外なところが反対 保護者ボランティア組織のあり方と運営のコツ

AI要約

明善小学校PTAは、自主的な解散を決定し、保護者ボランティア組織として再出発した。

解散のきっかけは、負担感や役員不足など組織の課題に対する保護者の声であり、組織のあり方を見直す過程で決定された。

PTAの解散により、学校での子供の安全活動に変わりがないことも一因となった。

PTAは不要、「解散決断」後に意外なところが反対 保護者ボランティア組織のあり方と運営のコツ

PTAは強制加入ではなく、自由に入退会できる任意加入という認識が広がり、本来の目的や活動を見直した結果、「解散」を決めるPTAが見られるようになった。長野県松本市立明善小PTAは2024年3月、PTAを解散。4月から、会費なしの保護者ボランティア組織として再出発した。なぜ解散を決めたのか。解散後、学校と保護者はどのように関わっているのか。同校元PTA会長の石曾根一能(いしぞね・かずよし)氏への取材を通し、PTAの現在地を探る。

「きっかけは、2022年3月、保護者から届いた一通の退会届でした」(石曾根氏、以下同)

長野県松本市にある明善小学校のPTAは、子どもが入学したら自動的に入会する仕組みだった。PTA本部の下に学年部、厚生部、広報部、施設部、支部活動部と5つの部会があり、半強制的に参加が強いられてきた前例踏襲型の組織だったという。

2021年度に同校PTAの副会長、2022年度からPTA会長になった石曾根氏は、退会届が届いた背景には「PTA活動に負担を感じている保護者が少なくない」「委員がなかなか決まらない」など、組織のあり方や運営方法に課題があると判断し、PTA活動の縮小を提案。校長、本部役員と議論を重ね、5つの部会を4つに減らし、PTA会費も年3000円から2500円に値下げした。

石曾根氏は2023年度もPTA会長をつとめ、全保護者に対し加入・非加入の意思確認を行い、組織のさらなる簡略化を図っていくことを周知した。

「結果、加入率は50%になりました。予想していたよりも低い数字でしたが、非加入を選択した保護者からは、『加入はしないけれども、草刈りなどこれまでPTAが担ってきた保護者活動には参加します』という声も多く聞かれました。ちなみに、非加入を選択した理由は、『役員になりたくないから』という声が多かったです」

保護者の声を受け、これからのPTAのあり方について、校長、教頭、PTA担当教員、本部役員と何度も話し合いを重ねたという石曾根氏。その回数は7~8回に及んだという。2023年秋、案がまとまった。

「2024年度からは、『会長、副会長、会計をPTA本部とし、4つの部会は撤廃。本部役員以外の保護者には加入の意思確認はせず、会員・非会員の区別はつけない。PTA活動は、必要に応じて都度ボランティアを募集し、都合がつく保護者に参加してもらう』という運営方法にしていくことになりました」

明善小学校PTAは当時、松本市のPTA連合(以下、松本市P連)に加入していたため、石曾根氏は、2024年度からPTAの形態が変わることを松本市P連に報告した。しかしそこで、意外な反応に困惑したいう。

「当校PTAの改革計画に、反対してきたのです。その理由として、『PTA会員が本部役員だけになることにより市P連への分担金が減り、市P連は減収となる』『市P連で開催する行事や研修などの催しの際、明善小PTAからの協力スタッフが少なくなり、他校とのバランスが取れなくなる』などをあげてきました」

各校PTAの運営を下支えする役割であるはずのPTA連合からのまさかの反対意見に、「松本市P連に加入していること自体に疑問を持ち始めました」という石曾根氏。再度本部役員らと話し合いを重ね、明善小PTAは松本市P連からの退会を決めた。

「自分たちがこれからやろうとしている運営について今一度考えてみると、PTAという組織にこだわる必要もないのではないかと。現在の改革案を踏襲しつつPTAは解散し、保護者ボランティア組織として再スタートを切ることにしました」

小学校の場合、児童の登下校を見守る「旗振り当番」の割り振りをPTAが担っていることが多い。仮にPTA解散の声が上がっても、児童の安全確保のための見守り活動をどうするかで意見が分かれ、解散まで踏み切れないというケースも聞く。

「当校は、校長先生が『子どもたちの安全は子どもたちで守る』という考えで、児童会主体で地区別に高学年の児童が低学年の児童をサポートする活動を行っており、PTAは関わっていませんでした。この点も、解散への後押しの要因の1つだったように思います」