おまわりさんの目に涙も 原発被災地で13年ぶりに駐在所が再開

AI要約

福島県浪江町津島地区で13年ぶりに駐在所が再開。事故前は1460人が暮らす地区に現在は18人。宮下銀次巡査長が住み込みで復興を見守る。

原発事故による汚染で地域の絆が断ち切られた津島地区。10年以上の除染作業の結果、一部の地域が「復興拠点」として避難指示解除されたが、多くの地域は帰還困難。

宮下巡査長は震災後に福島県警で働き、今年3月に浪江町の駐在所を任される。地区で生活するわずかな住民たちの安全と支援に努めている。

おまわりさんの目に涙も 原発被災地で13年ぶりに駐在所が再開

 東京電力福島第一原発から北西に約30キロ。放射性物質による汚染が深刻だった福島県浪江町津島地区で31日、13年ぶりに駐在所が業務を再開した。事故前は1460人がいた地区に暮らすのは、現在18人。歩み出したばかりの復興を、宮下銀次巡査長(40)が住み込みで見守っていく。

 「パトロールで目にするのは、避難先から帰還された方、移住された方、帰還に向けて準備する方々の生き生きとした姿です……」

 開所式であいさつした宮下巡査長は何度も声を詰まらせ、「すみません」と謝った。その目には光るものがあった。

 津島地区は原発から20キロ以上離れているが、風に乗って北西に広がった放射性物質により汚染された。帰還困難区域となり、1460人が暮らしていた地区は無人になった。特に、津島は開拓者が入った土地で、独特の助け合いが根付いていた。原発事故による離散で地域の絆が断ち切られることが深刻視されている。

 10年以上かけて除染などが進められた結果、町の福島再生賃貸住宅や支所がある153ヘクタールが2023年3月に「復興拠点」として避難指示を解除された。ただ、山間部の除染は難しく、地区の9割以上は帰還困難区域のまま。地区で生活しているのは18人にとどまる。

 宮下巡査長は岩手県出身。震災のあった2011年に福島県警の警察官となり、白バイ隊員など主に交通畑を歩んできた。今年3月、浪江町を管轄する双葉警察署浪江分庁舎に異動。開所を控えた駐在所を任された。