秋田の無人駅で「“がっこ”爆売れ」の謎現象 「漬物危機」に瀕した秋田の“お母さん”たちが、無人駅でがっこ作りを始めたワケ

AI要約

秋田県大阿仁地区で催される「がっこ市」では、漬物の作り方を知りたい地元の人たちが集まり、地域のにぎわいを創出している。

2023年から始まる漬物業界における厳しい衛生基準により、多くの小規模生産者が漬物製造を断念している中、秋田県内では営業許可を取得した施設が多数存在する。

阿仁比立内がっこステーションは共同加工所をオープンし、地域活性化に貢献しており、がっこ市では主婦たちが独立採算で販売を行っている。

秋田の無人駅で「“がっこ”爆売れ」の謎現象 「漬物危機」に瀕した秋田の“お母さん”たちが、無人駅でがっこ作りを始めたワケ

 「このちょっとぴりっとするのはなんの味だべ?」

 「これは唐辛子をさっと(少し)入れて作ってまして」

 「お茶っこに合うな、おいしくて(笑)」

 無人駅だった駅舎に、色とりどりに並ぶ漬物。これは漬物のことを「がっこ」と呼び、県民の暮らしに深く根づいている秋田県大阿仁(おおあに)地区で催されている「がっこ市」の様子だ。

 自家用の漬物があるのに地元の人たちは他人の作り方を知りたくて、がっこ市にやってくる。この地区ならではのニーズである。

 3年前まで、こんな風景が見られるとは思ってもいなかった――。

■漬物業界を襲った衝撃

 2021年6月1日、漬物業界に震撼が走った。改正食品衛生法がついに施行されたのだ。今後は、漬物の製造販売が「届け出制」から「営業許可制」になる。

 そして今年5月31日、3年間の経過措置期間が終了、6月1日から完全施行された。

 営業許可を得るためには自宅と作業場を分離させ、野菜などの素材用と手洗い用の専用シンク、ひじで操作可能なレバー式や手を触れない自動センサー式の蛇口の設置など、厳しい衛生基準を満たさなければいけない。

 自宅で手作りの漬物を製造、販売する小規模な生産者にとって、こうした設備改修の費用負担は大きく、漬物製造を断念する生産者も少なくない。

 そうした中、漬物王国として名高い秋田県では、今年の3月末までに334施設が漬物製造販売の営業許可を取得。自前の施設や共同加工所を建設して生産を続けている。

【画像】寂しかった駅舎が手作りリノベーションで「“爆売れ”がっこ」の加工所に大変身! 【ビフォー・アフターを見る】(19枚)

 その334ある施設の1つが、秋田県北部の真ん中、四方を里山に囲まれたマタギ発祥の地、大阿仁地区にある。

 その名も「阿仁比立内がっこステーション」。地域のにぎわい創出に取り組み、2015年から年1回(2月)でがっこ市を開催する一般社団法人大阿仁ワーキングが運営する。

 2023年11月1日に共同加工所をオープンさせ、今年2月、記念すべき10回目のがっこ市は午前中で完売する大盛況ぶりだった。出品者の主婦たちが自ら販売を行い、売り上げの10%を大阿仁ワーキングがいただく独立採算制だ。