“最新年金試算”「100年持続可能」も前提条件が楽観的?

AI要約

今年公表された『財政検証』では、将来の公的年金の給付水準を試算し、100年間の持続可能性が確保されたと評価された。

所得代替率が重要な指標として用いられ、2024年度の数値や将来のシナリオに基づいて評価が行われている。

一部からは、前提条件が楽観的だという指摘もあり、議論が続いている。

“最新年金試算”「100年持続可能」も前提条件が楽観的?

“年金の定期健康診断”ともいわれる、将来の公的年金の給付水準を試算する『財政検証』が公表されました。

『財政検証』では、今後100年間、年金制度の持続可能性が確保されたと評価されました。一方で、試算の元となる前提条件が、楽観的ではないかという指摘も出ています。

今回公表された『財政検証』とは、年金制度が持続可能かを5年に一度点検する仕組みで、『年金の定期健康診断』といわれています。

指標としているのが、所得代替率です。

所得代替率とは、『モデル世帯』の年金が、現役世代男性の平均手取り収入の何%にあたるかを示すもので、50%が健康の目安です。

『モデル世帯』は、厚生年金に40年間加入した65歳の夫と専業主婦の世帯です。

2024年度でみてみると、現役男性の平均手取りは37万円で、『モデル世帯』夫婦の年金支給額が22万6000円。所得代替率は61.2%です。

今回の財政検証での経済シナリオごとの所得代替率です。4つのケースに分かれています。

実質経済成長率が、

「高成長したケース」で所得代替率は56.9%

「成長したケース」で57.6%

「現状のまま横ばい」で50.4%

「マイナス成長したケース」は33.0~37.0%

と、マイナス成長でなければ、所得代替率50%を維持できるとしています。

林官房長官は、

「将来にわたって、所得代替率50%を確保できるということが確認された。今後100年間の公的年金制度の持続可能性が確保されている」としています。

明治大学大学院の田中秀明教授です。

「今回の検証結果は楽観的。(所得代替率)『50.4%』とは、いかにもやりくりした絶妙な数字だ」

そもそも年金の財源は、「積立金」が約1割、「国庫負担」が約2割、「保険料収入」が約7割です。

見通しが改善した要因の1つ目です。

高齢者や女性の労働参加が増え、年金の保険料収入が増えました。

見通しが改善した要因の2つ目は、年金積立金の運用の好調です。

年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2001年度以降の累積収益額は年々増加して、2023年度の運用収益額は、過去最大の45兆4153億円の黒字。 積立金の運用が好調です。

ただ、試算の前提条件が楽観的だという指摘があります。

合計特殊出生率は、2023年、過去最低の1.20でしたが、今回の財政検証では、将来の出生率を1.36で計算しています。

そして、実質賃金は、直近の2024年5月、マイナス1.4%で、過去最長の26カ月連続のマイナスでしたが、将来の実質賃金上昇率を、現状横ばいのケースで、年換算プラス0.5%で計算しています。

立憲民主党の長妻政調会長は、

「政府の試算は楽観的すぎる。所得代替率が50%を超えるように逆算して作っているのではないか」と指摘しています。