3G→4G→5G! 空ではカメラが「鉄アレイ」、360度視界回転のアクロバット飛行◆空自「T4練習機」に乗ってきた【自衛隊探訪記】

AI要約

航空自衛隊の戦闘機パイロット候補生がT4練習機でアクロバット飛行を体験。対領空侵犯措置、アクロバット飛行訓練を通じて戦闘機パイロットの厳しさを垣間見る。

飛行中に5Gまでの圧力を体験し、さまざまな曲技を体感する。アクロバット飛行の厳しさとパイロットの訓練について報告。

ブルーインパルスの演技技術を体験し、予想を超える機体の振動やGに驚き。実際の飛行は映像とは異なるリアルな体験だった。

3G→4G→5G! 空ではカメラが「鉄アレイ」、360度視界回転のアクロバット飛行◆空自「T4練習機」に乗ってきた【自衛隊探訪記】

 航空自衛隊の戦闘機パイロット候補生が訓練する「T4練習機」に、空自浜松基地で搭乗した。訓練空域で体験したのは、急上昇しての一回転やきりもみ旋回といったアクロバット飛行。上下の感覚が分からなくなり、体には強烈なGがかかる。ブルーインパルスさながらの飛行の様子をリポートする。(時事通信社会部 釜本寛之)

 ◇僚機発見、「対領空侵犯措置」を疑似体験

 富士上空の遊覧飛行を終え、機体は浜松基地の南方約40キロ、遠州灘の上空に設定された訓練空域へ向かった。ここでアクロバット飛行を体験する。

 その途中、操縦かんを握る岡田真貴2等空佐(44)が「この方向を見ててくださいね。あと10秒くらいかな」と窓の向こうを指さした。「ほら、あれ」と言われてもなかなか気付かなかったが、白い雲が背景になって明瞭になり、ようやく点のような機影を見つけた。訓練中の別のT4という。

 距離もあるのだろうが、想像以上に小さい。日本の領空に近づく不審機にスクランブル発進して対応する「対領空侵犯措置」。防衛省から報道発表される際の写真から、もっと大きく見えるまで近づくと思っていたが、実際にはこのくらいから望遠レンズで撮影したり、追尾したりすることも多いそうだ。

 T4にレーダーはないので、相手の飛行経路は管制とのやりとりや僚機の交信から予測する。レーダーを積んだ戦闘機ならもっと楽なのかと思ったが、そうでもないそうだ。

 「F15などにはレーダー情報を使って接近を容易にする機能もありますが、相手の対応で使えない状況もあります。T4のようなアナログ手法の重要性は変わりません」。対中国など防空の最前線の厳しさを垣間見た気がした。

 ◇5Gの圧、7種の曲技体験

 「さあ、そろそろいきますよ!」。訓練エリアに到着し、機体がバンク(傾斜)して一気にスピード感が増していく。まずは3G、そして4G。「まだいけますね?」と確認があってさらに5Gへ。加速のたびに高まる重圧。体全体が抑え込まれるような感覚に、思わず「ウオオオ」と声が漏れた。周りの景色を見る余裕もない。というより首を左右に振るのに相当の力が必要で、無理をすれば筋を違えてしまいそうだ。5Gだと物の重さは単純計算で5倍。手に持った撮影用のカメラはまるで鉄アレイになったような重さで、ぶれないように必死で支えた。耐性がない人は最初の段階で気分が悪くなり、基地に戻るケースもあるそうだ。

 記者は乗り物酔いに強いたちだったのが幸いしたのか、体調は異常なし。その後、急上昇して180度向きを変える「インメルマン・ターン」、逆に背面飛行から急降下する「スプリットS」、大きなループを繰り返す「クローバー・リーフ」、8の字飛行の「キューバン・エイト」、きりもみ飛行のような「バレル・ロール」など7種のアクロバット飛行を体験した。

 ブルーインパルスの演技にも入っている飛行技術で、前日に浜松基地に隣接する空自の広報施設「エアーパーク」で、どんな技か「予習」してきたが、実際の飛行は予想をはるかに超えていた。ブルーインパルスの演技集やVRゴーグルで疑似体験した映像の再現度はすごかったが、機体の振動や何より強烈なGが加わると、まるで別物だ。