「雇用の責任果たして」パタゴニア雇い止め訴訟から1週間、社側は請求棄却求めるも具体的主張せず

AI要約

パタゴニア日本支社で働いていた元パート社員が、無期転換直前に解雇されたとして訴訟を起こしている。

元社員はパートタイマーの同僚の無期転換逃れ雇い止めに疑念を抱き、労働組合を結成して活動していたが、自らの契約は打ち切られた。

労働契約法18条に基づく約7万円の損害賠償を求める訴訟の審理が進行中で、元社員は会社の雇用の不安定さに疑問を投げかけている。

「雇用の責任果たして」パタゴニア雇い止め訴訟から1週間、社側は請求棄却求めるも具体的主張せず

アメリカに本社を置くアウトドアメーカー、パタゴニア日本支社の元パート社員の女性が、無期転換になる直前にパタゴニア社から解雇されたとして裁判になっている。(小林英介)

パタゴニア社を訴えたのは元パート社員の藤川瑞穂さん。藤川さんは2019年からパタゴニア社の札幌北ストアで働き始めた。原告側の陳述書によると、藤川さんは20年6月にパートタイマーの同僚が「無期転換逃れ」による雇い止めで突然退職し、疑問を感じたという。

藤川さんはその後、札幌地域労働組合に加盟し、22年に「パタゴニアユニオン」を結成。有期雇用契約の原則5年上限撤廃を求め、23年の年末にはストライキを実施したが、藤川さんの契約は打ち切られた。藤川さんの契約が更新されたのは4年9か月、合計9回に及んだ。

無期転換逃れに関する条文は、労働契約法18条にあたる。

「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」(一部略)

この規定は13年の労働契約法改正で設けられ、非正規労働者の雇用安定を図ることが目的だった。

原告側が約7万円の損害賠償を求めてパタゴニア社を提訴したのは今年2月。それから約4か月たった6月3日、藤川さんは札幌地方裁判所で意見陳述に臨んだ。その冒頭、藤川さんはパタゴニア社の品質や環境負荷削減、サプライチェーンの労働者に対する人道的配慮などを行う企業姿勢を評価。藤川さんは「利益のみを優先としない、その企業姿勢に惹かれて」パタゴニア社への入社を決意したという。

「労働契約法18条は使用者の有期雇用契約の濫用的な利用を制限し、労働者の雇用の安定を図ることを目的としている。会社はその趣旨を顧みることなく、5年近く自社のサービスを提供してきた従業員を使い捨て、失業者にしている」(藤川さん)

証言台の前に立った藤川さんは、自らの思いをぶつけた。

「会社はなぜ『原則5年上限』にこだわるのか。会社はまず自分たちの経営能力を疑うべきだ。改めてパタゴニアが雇用の責任を果たすことを強く求める」

被告のパタゴニア社側は請求を棄却するよう求め、そのほかの事項については追って主張するとしている。