予想を上回る賃上げでも、実質賃金マイナス続く…実質賃金はいつプラスに?【播摩卓士の経済コラム】

AI要約

名目賃金が予想を上回る伸びを示したものの、実質賃金は依然マイナスで、実質プラスへの転換は見通せない状況となっている。

大手と中小企業の賃上げの格差が鮮明になっており、中小企業では春闘後に賃上げが順次実施される見込み。

連合の集計や日本商工会議所の調査から、賃上げ率の違いや大企業と中小企業、労働組合の有無による格差が依然として存在することが示唆されている。

予想を上回る賃上げでも、実質賃金マイナス続く…実質賃金はいつプラスに?【播摩卓士の経済コラム】

大幅賃上げが実現した春闘を受けた、注目の初の賃金統計が発表されました。

名目賃金が予想を上回る伸びを示したものの、実質賃金は依然としてマイナスで、実質プラスへの転換は、なお見通せない状況です。

■4月の所定内給与(基本給)は29年ぶり大幅増

厚生労働省が発表した4月の毎月勤労統計によれば、4月の現金給与総額、すなわち名目賃金は、前年同月比で2.1%の増加となりました。

春闘の高い賃上げ妥結を受けて、大企業を中心に実際に4月から給与が引き下げられたことを受けたもので、中でも基本給にあたる所定内給与は、前年同月比2.3%増と、29年6か月ぶりの高い伸びとなりました。

しかし、消費者物価(除く帰属家賃)が2.9%上昇したことから、実質賃金は前年同月比で0.7%の減少でした。

減少幅は3月より1.4ポイントも縮小し、明るい兆しも感じられますが、実質賃金マイナスは、これで25か月連続です。

■大手と中小で、賃上げ格差鮮明に

春闘が早々に妥結し、4月から賃上げが実施された企業は全体の一部に過ぎません。

中小企業の多くは大企業の妥結状況を見ながら自社の賃上げ率を決めていくので、5月から夏にかけて順次、給与の引き上げが実施されます。

今後、これらが実際の賃金統計に反映されるので、実際に支払われた給与額、すなわち名目賃金がさらに伸びることが期待されます。

連合が6日に発表した最新の集計では、春闘での賃上げ率は5.08%、うち中小企業は4.45%で、全体、中小ともベースアップ分は3%を超えており、期待を抱かせる数字ではあります。

他方、日本商工会議所が5日に発表した、全国の中小企業の賃上げ状況調査では、今年度の正社員の月給の賃上げ率(定期昇給を含む)は、前年度比3.62%(9662円)と、連合集計の中小企業の数字、4.45%とはやや開きがあり、大企業と中小企業、とりわけ労働組合のない小規模企業との格差が、依然として大きいことがうかがえます。