ゴーグル内にリアルな浸水、煙映像…AR駆使の防災アプリ普及 避難所設営用も実用化へ

AI要約

ARの技術を活用した防災教育アプリが広がっている。アプリは被災を疑似体験させることで災害のリアリティを伝え、防災意識を高める効果が期待されている。具体的な活用例と開発経緯が紹介されている。

アプリを使った疑似体験が各地で展開されており、実際の災害状況を再現した浸水や火災の映像を体験することで、参加者からは高い評価が寄せられている。

開発者は防災分野での技術活用を志し、災害体験のリアリティを追求するために様々な取り組みを行っている。今後は避難所設営に役立つアプリ開発にも取り組む予定だ。

ゴーグル内にリアルな浸水、煙映像…AR駆使の防災アプリ普及 避難所設営用も実用化へ

AR(拡張現実)の技術で現実の風景に浸水などの3D映像を重ねる防災教育アプリの活用が広がっている。アプリ搭載のゴーグル型の機器を使って被災を疑似体験してもらうことで災害を自分事としてとらえてもらう効果が期待でき、全国各地の防災訓練、イベントなどで取り入れられている。開発した神奈川歯科大の板宮朋基教授はこの技術で避難所設営に役立つアプリ作りも進めており、今夏からの実用開始を目指している。

■浸水で足元見えず

5月中旬、横浜市鶴見区の岸谷第二自治会が開いた防災イベントで、ゴーグル型の機器を装着した子供ら参加者が「ひなんじょ」「ゴール」と書かれた場所に向かってゆっくりと歩いた。

ゴーグル内にはその場の風景に浸水の映像が重ねられ、参加者は足元にある段ボールなどが見えない状況。実際の災害現場では水面下でマンホールの蓋が外れるなどの危険が潜んでいることもあり、手に持った傘で足元を確認しながら歩を進めた。

会場では同様に火災の煙の映像を映すゴーグルも用意され、参加者からは「リアルで、最初はびっくりした」「すばらしい体験」などの声が上がった。板宮教授が開発したアプリを使って災害の疑似体験サービスを提供する一般社団法人「AR防災」(東京)によると、横浜市や横須賀市にアプリをインストールした機器を納入。東京都、名古屋市、神戸市といった自治体、企業、商業施設などでも活用が進んでいるという。

板宮教授は画像処理学が専門で、平成23年の東日本大震災をきっかけに自身の技術を防災分野で役立てたいと考えて取り組みを開始した。車運転時の津波被害を体験するVR(仮想現実)シミュレーターなどの開発を進める中で「自分の街での浸水の疑似体験ができないか」という要望が寄せられたことが、AR活用のアプリ開発につながったという。

「短時間で災害を自分事として考えてもらうためには半端なことではダメだと思った」。濁流の数値シミュレーションをしている研究者らの協力を得たり、消防の訓練施設で実際の火災、煙の状況を体感したりするなどしてリアルな再現を追求。28年に東京都内の小学校の避難訓練で初披露して評判を呼び、各地で活用されるようになった。

■避難所の設計図「3Dで表示」