崖下50mの子助けた実績 ロープレスキュー隊、世界大会へ

AI要約

西宮市の消防職員有志によるロープレスキューチームが世界大会に唯一出場

チームは自主活動でトレーニングを行い、技術を磨くために努力

世界大会での競技では安全性や救出の仕方が重要となる

崖下50mの子助けた実績 ロープレスキュー隊、世界大会へ

 兵庫県西宮市の消防職員有志によるロープレスキューのチーム「NR JAPAN」が12~15日、ベルギーで開かれる世界大会「GRIMPDAY(グリンプデイ)」に日本から唯一出場する。ロープを使って要救助者を助け出す技術を競う大会で、非番や休日を返上してトレーニングした成果を大舞台で披露する。

 ◇消防職員有志、手弁当で鍛錬

 5月中旬、チームは市内の県立甲山森林公園で、ビル3~4階に相当する高さの橋の下から、けが人を引き上げるトレーニングをしていた。

 「準備オーケー」「今行きますよー」。1人が降下し、けが人役のメンバーを手際よくストレッチャーに乗せて固定。残る4人がロープを引っ張った。橋の上に無事寝かせると、救出完了。チームの代表で、西宮消防署高度救助隊副隊長の井上桂さん(33)が「7分半。まあまあですね」とタイマーを見た。

 チームは2016年の結成。現在は救助隊員約15人が所属している。ロープレスキューは、消防車両が進入できない山間部や高いビル、工場などが活動の場で、ロープを使って傷病者を安全に上げ下ろしし、必要な場合は医療的処置を施す。井上さんは「いろいろな現場活動で、より安全・迅速に救出できるよう技術を磨いている」と胸を張る。

 自主活動のため、トレーニングには職場と同じ機材を自腹で購入して使う。大会出場には有給休暇を充て、旅費も自腹だ。全国で100を超えるチームが活動する中、NR JAPANは23年に沖縄であったアジア国際大会「橋(チャオ)」優勝の実力を持つ。

 世界大会はベルギー南部のナミュールで開催され、20カ国・地域の24チームが出場予定。さまざまな現場状況の課題が1日5ケース出され、過去には遊園地を貸し切ったり、ボートで現場へ向かったりする課題もあったという。安全性やスピードだけでなく、要救助者のためになる救出の仕方が重要となる。

 ◇現場活動「苦もなくやれた」

 メンバーは、西宮市内で約50メートルの崖下に取り残された子どもを救出したこともある。大会で100メートルの高さを引っ張り上げることは珍しくなく、「苦もなくやれた」と井上さん。海外チームの技術を仲間に提案して取り入れることもあり、大会への参加は現場活動に役立っているという。

 チームは「世界大会で知識や技術を吸収し、自分たちの能力がどれくらいかも知りたい」と意気込んでいる。【稲田佳代】