各国間の温度差が目立ったG7財務相・中央銀行総裁会議:日本の為替介入の是非を巡る議論は回避

AI要約

G7財務相・中央銀行総裁会議では、ウクライナ支援に向けたロシア凍結資産の活用策が議論された。

EUは運用益を活用する方針を提示し、米国は将来の利子を担保に債券発行を提案している。

日本の存在感は薄いが、EU案や折衷案がG7サミットで具体化される見通し。

各国間の温度差が目立ったG7財務相・中央銀行総裁会議:日本の為替介入の是非を巡る議論は回避

主要7か国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が5月23~25日に、議長国のイタリアのストレーザで開かれた。全体的に大きなサプライズはなかったが、日米欧の3地域間でのスタンスの違いが浮き彫りになった面がある。

ウクライナ支援に向けたロシアの凍結資産の活用の方針について、G7は一致した。しかし具体的な方策については合意できず、6月のG7首脳会議(サミット)に向けて詳細を詰める方針が示された。

欧州連合(EU)はG7の直前に独自案をまとめている(コラム「G7財務相・中央銀行総裁会議ではロシア凍結資産の活用とドル高・日本の為替介入が注目点」、2024年5月23日)。凍結資産全体の3分の2はEU域内にあり、多くはベルギーの決済機関ユーロクリアが管理する。EUは、凍結資産そのものを活用するのではなく、その運用益を活用する方針を決めた。年間30億ユーロ(約5,000億円)の運用収益が見込めるという。

しかし、世界銀行はウクライナの復興に必要な資金は今後10年間で4,860億ドルと見積もっており、凍結資産の運用益の活用では、ウクライナ支援には全く足りないことになる。

この点を踏まえて米国は、凍結資産の将来の利子を担保に、債券発行や借り入れをする案を示している。西側が凍結したロシア資産は総額3,000億ドル(約47兆円)にのぼるが、この手法を使えば支援額は500億ドルにまで膨らむ可能性があるという。

しかしこの場合は、将来かなりの長期間にわたってロシア資産を西側諸国が凍結することが前提となる。それは、所有権確保などの観点から、国際法に抵触するおそれも指摘され、慎重論も根強い。また、一部の国での外貨準備削減をもたらし、国際資金フローに悪影響を与えるリスクが高まる可能性もある。

共同声明では、EUの決定を歓迎するとした上で、6月に開かれるG7サミットに向けて、支援策の選択肢を示すべく議論を進めている、とまとめた。最終的にはEU案がベースとなるか、EUと米国の折衷案になることが予想される。いずれにせよ、差し押さえたロシア資産のうち円資産が数兆円と大きくないこともあり、この議論で日本の存在感は薄い。