裁断くずから生まれた「服の鉛筆」 富山発、縫製メーカーの循環型ものづくりへの挑戦

AI要約

株式会社ミヤモリ代表取締役社長の宮森穂さんは、体操服の裁断くずを再利用した「服の鉛筆」を開発し、サーキュラーエコノミーの実現を目指している。

裁断くずの有効活用から始まった取り組みは、環境負荷を軽減するサステナブルな製品の開発につながっている。

宮森さんは地域資源を活用した製品開発や環境教育に注力し、持続可能な地域社会の実現を目指している。

裁断くずから生まれた「服の鉛筆」 富山発、縫製メーカーの循環型ものづくりへの挑戦

体操服の裁断くずを「服の鉛筆」として生まれ変わらせた株式会社ミヤモリ代表取締役社長の宮森穂さん。廃棄物の有効活用から始まった取り組みを、サーキュラーエコノミーの実現へとつなげている。

富山県の地域資源をいかした製品開発や小学生への環境教育など、多角的なアプローチで持続可能な地域社会の実現を目指す宮森さんに聞いた。(聞き手 朝日新聞SDGs ACTION!編集部・池田美樹)

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宮森穂(みやもり・みのる)

株式会社ミヤモリ代表取締役。富山県小矢部市にある縫製工場の5代目社長として、年間60万枚以上のアパレル製品の縫製を手掛ける。裁断くずを再利用した「服の鉛筆」など、環境負荷を軽減するサステナブルな製品の開発をリード。地域社会や次世代への持続可能な未来を目指し、企業全体での環境保護活動に取り組んでいる。

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――体操服の裁断くずを再利用して鉛筆を作っています。アイデアのきっかけと開発の経緯を教えてください。

洋服を作る際、生地の約2割は使わない部分が出ます。例えば私たちの工場では、年間約24tもの裁断くずが出ています。これをなんとかしたいという思いが長年ありました。以前から様々な試みをしており、例えば綿にしてぬいぐるみの中綿に使うなどしていましたが、手間がかかるといった課題がありました。

そんな中、約3年前にある社員が木炭のオブジェを見て、「もしかしたら洋服の生地も炭にできるんじゃないか」と提案してくれました。これがきっかけとなり、開発が始まりました。

そこでまず、富山県繊維協会を訪ねてこのアイデアについて相談しました。すると驚いたことに、協会の理事の方が30年前に同じようなことを研究していたと教えてくれました。

その時は研究だけで終わったそうですが、一緒に研究開発をしていた会社がまだ存続していることがわかりました。そこで、炭化の技術を持っているその会社に出向いて共同開発の提案をし、一緒に開発を進めることになりました。

現状の裁断くずの処理は、埋め立てもしくは燃焼といった、CO2の大量発生を含め地球環境に悪影響を及ぼす方法で処理されています。それらを、より環境負荷の少ない日本古来の「蒸し焼き」にして炭化させる処理に変えるため、温度や時間など技術面を研究しました。

最終的には炭化率20%以上を達成し、CO2の発生を抑えつつ2次活用できる循環型のプロセスを確立しました。