植田総裁「世界同時株安」の教訓、日銀9月会合は「無風通過」作戦をとる真因

AI要約

7月31日の追加利上げ後の混乱から内田副総裁のハト派姿勢で市場が収束

金融政策決定会合では現状維持が予想される

日銀は緩和政策を継続しながら、市況や経済動向を注視している

植田総裁「世界同時株安」の教訓、日銀9月会合は「無風通過」作戦をとる真因

 日銀による7月31日の追加利上げ後、植田総裁の記者会見がきっかけで世界的な同時株安が起こり市場は大混乱した。その後8月7日には内田副総裁がハト派姿勢を強調し、金融市場の混乱を収束させたものの、植田総裁や高田委員は追加の利上げ方針を明らかにしている。現在日本経済は日銀の見通しに沿って推移しており、個人消費や賃金も堅調に回復しているが、次回の利上げはいつになるのだろうか。そして、2025年の動向はどうなるのか。

 9月19・20日の金融政策決定会合では、ほぼ確実に金融政策の現状維持が決定されると筆者は考える。政策金利(無担保コール翌日物)の誘導目標は0.25%で据え置かれる公算が大きい。

 今回の金融会合における日銀の内部的な目標は、「無風通過」にあると見られる。7月31日の追加利上げは、決定そのものはさほど驚きではなかったものの、その後の植田総裁の記者会見がタカ派に受け止められ、世界同時株安のきっかけとなってしまったからだ。

 米ISM製造業景況指数や雇用統計の悪化が重なるという不運に見舞われたとはいえ、植田総裁が連続的な利上げ方針を歯切れよく示したことで、円キャリートレード(低金利の円で資金調達をし、それをほかの資産へ投資する取引)の巻き戻しを誘発してしまったのは否定しようのない事実であろう。

 その発言を修正する形で、8月7日に内田副総裁が次のとおりハト派姿勢を強調し、金融市場の混乱収束に努めた経緯がある。

金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはありません。

最近の内外の金融資本市場の動きは極めて急激ですので、その動向や経済・物価に与える影響について、極めて高い緊張感をもって注視し、政策運営において適切に対応してまいります。繰り返しになりますが、当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要があると考えています。

 日銀として、このような事態は避けたいに違いない。