「従業員には朝礼で破産を告知」「日本の縮図」...地方で相次ぐ閉店で「百貨店業界」が直面している「悲惨な現実」

AI要約

百貨店の苦境が続いており、青森県の百貨店「中三」が破産申請を行い関係業者や地元を動揺させている。

百貨店の衰退は全国的な現象で、今年だけでも複数の百貨店が閉店や休業を余儀なくされている。

消費者の変化や大型専門店の台頭などが要因で、特にアパレル部門の厳しい状況が百貨店の衰退に拍車をかけている。

「従業員には朝礼で破産を告知」「日本の縮図」...地方で相次ぐ閉店で「百貨店業界」が直面している「悲惨な現実」

百貨店の苦境が続いている。

今年8月、青森県に本社を置く「中三」が破産申請を行ったことが判明。寝耳に水だった関係業者や行政が対応に追われる事態となっている。

「同社が破産申請の手続きに入ったのは先月29日。負債総額は現時点で約9億円です。破産については従業員らも周知されておらず、朝の朝礼で事実を告知されています。関係業者も品物の引き上げに訪れるなど現場は混乱状態が続いていました。

スタッフの雇用については今後、弘前商工会議所がハローワークや行政が情報共有しながら相談を行う予定です。ここ近年、中三は納品業者への支払い遅れが指摘されるなど閉店の噂は絶えずありました。しかし、あまりにも突然すぎた破産劇に地元では動揺が広がっています」(経済紙記者)

呉服屋から出発した中三の創業は1896年で、約130年の歴史を誇る老舗百貨店だ。最盛期となる1998年には415億円の売上高を記録するなど栄華を極めた。弘前店は62年にオープンし、長年地元で愛されるデパートとして知られていた。

だが、百貨店の衰退は青森だけには限らない。

「今年1月には広島県の『尾道福屋』や島根県の『一畑百貨店』が相次いで閉店。7月には岐阜県唯一の百貨店だった『岐阜高島屋』も老朽化や売上減少を理由に休業を決定。岐阜は島根に続き、百貨店のない県として4例目となります」(前出・経済紙記者)

全盛期には全国に311店舗も建ち並んでいた百貨店も今年に入って180を割り込むペースで減少を続けている。百貨店事情に詳しい消費経済アナリストの渡辺広明氏はその理由についてこう語る。

「かつて百貨店はスーパーと同じ役割を担っていました。しかし、70年代にかけて『イトーヨーカードー』『ダイエー』といったデパートよりも安い総合スーパーが台頭し、百貨店は宝飾品を扱ったり、デパ地下を拡大するなどより高級路線へとシフトしていった。その結果として消費者が日常的に足を運ぶ場所ではなくなってしまった側面がある」

さらに渡辺氏は百貨店苦戦の要因についてカテゴリーの細分化を挙げる。

「特に厳しくなったのがアパレル部門です。平成デフレによって『ユニクロ』などのファストファッションが人気を博した。これが徐々に百貨店が衰退していった原因の一つに数えられる。さらにおもちゃ屋、家具・生活雑貨店、家電量販店など続々と大型専門店が登場し、百貨店で扱っていたカテゴリーが先鋭化されていったのも衰退化に拍車をかけました」