【タワマンはどうなる?】海溝型の南海トラフ地震は横揺れが顕著 揺れ幅は東京23区で最大約3m、大阪市沿岸部のビルの最上階では約6mとの想定

AI要約

南海トラフ地震が発生し、M7.1の地震が起きた。

津波被害や建物の倒壊などの惨状が予想されている。

過去の同様の地震と比較して被害の規模は爆発的に増大している。

【タワマンはどうなる?】海溝型の南海トラフ地震は横揺れが顕著 揺れ幅は東京23区で最大約3m、大阪市沿岸部のビルの最上階では約6mとの想定

 8月8日午後4時43分頃、日向灘を震源とするM(マグニチュード)7.1の地震が発生した。その日、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(注意)」を初めて発表した。長年の脅威とされてきた南海トラフ地震は、今後30年以内に70~80%の確率で起こるとされ、その規模はM8~9クラスと超巨大だ。

 もし、実際に南海トラフ地震が起こった場合、どうなるのか。シミュレーションをしてみよう。

 けたたましい緊急地震速報が鳴り響いた後、カタカタとした小さな揺れを感じる。刹那、襲いかかってくるのは立っていられないほどの大きな横揺れだ──南海トラフ地震は海溝型の地震のため、横揺れが特に顕著とされる。

 家の中では、固定されていない家具は滑るようにずれ、たんすや冷蔵庫といった重い家具が体めがけて迫ってくる。家の外にいても、体を預けようと固定された電柱までの数mが移動できず、その場に這いつくばることしかできないだろう。

 やっと揺れが収まっても、すでに津波が向かってきている。揺れからわずか2分後には、静岡県静岡市清水区と焼津市に到達し、三重県尾鷲市や和歌山県串本町、徳島県海陽町、高知県室戸市でも、地震から10分以内に津波が到達するという。その時点の津波の高さは1m。成人でも命を落とす高さではあるが、堤防や護岸工事を施された沿岸部では、まだ耐えられるだろう。だが、その10分後には、黒い濁流は10~20mを超える高さにまで一気に増し、列島に襲いかかるというのだ──。

 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループの2012年の試算によると、想定死者数は最大32万3000人。2019年の再試算で23万1000人に減少したが、それでも東日本大震災の死者・行方不明者約1万8000人の約13倍という数字だ。

 いまから約80年前に、同じ南海トラフを震源域として発生した昭和東南海地震(1944年)と昭和南海地震(1946年)を合わせた死者は、約2500人だったという。時代が変わり、人口が大幅に増えたことで、被害は爆発的に膨らむ。

 前述したように海溝型地震は、大きな横揺れが特徴だ。その被害をもろに受けかねないのが、都市部や臨海部に林立するタワーマンション。東京の臨海エリアや横浜、大阪、名古屋のタワマンは“社会的ステータス”の象徴の1つでもある。

 ところが、高層の建物は、ゆっくりとした「長周期地震動」と共振することでさらに揺れる。内閣府の検討会による推計では、東京23区で最大約3m、大阪市沿岸部のビルの最上階では揺れ幅が約6mに及ぶと想定している。地震の揺れが収まっているにもかかわらず、長いと10分以上、しかも地震の揺れ以上に揺れる状況が続く恐怖は想像したくもない。停電してエレベーターは動かず、高層ゆえ階段で下りるのにも時間がかかる。その間に火災が起きれば、半壊リスクも高まり、命の危機に直結する。

 今年2月、中国・南京にある34階建てマンションで発生した火災では、15人が死亡し、44人が重軽傷を負った。多くのタワマンが立つ臨海部の埋め立て地では、液状化現象で長期にわたって住むことも通ることもままならない状況に陥ることも考えられる。くれぐれも注意しておきたい。

※女性セブン2024年9月5日号