南海トラフ地震「被害想定範囲」に7基の原発 「臨時情報に伴う措置が定められていない」ことの問題が浮き彫りに

AI要約

日本で起こったマグニチュード7.1の地震により、南海トラフ地震のリスクについて気象庁が初めて注意を喚起。特に川内原発の運転停止を求める声が高まっている。

巨大地震発生時、原発と津波は分けて考えられず、津波被害が事故を引き起こす可能性が高い。過去の福島事故から、原発の危険性が再び浮き彫りに。

原発の臨時情報に伴う措置が定められていないことが判明し、専門家からは巨大地震発生時の即時停止を求める声が上がっている。

南海トラフ地震「被害想定範囲」に7基の原発 「臨時情報に伴う措置が定められていない」ことの問題が浮き彫りに

 8月8日午後4時43分頃、日向灘を震源とするM(マグニチュード)7.1の地震が発生した。その日、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(注意)」を初めて発表した。長年の脅威とされてきた南海トラフ地震は、今後30年以内に70~80%の確率で起こるとされ、その規模はM8~9クラスと超巨大だ。

「大地震が起きれば、川内(せんだい)原発で大事故が起きる」

 8月14日、鹿児島県の市民団体は川内原発(鹿児島)の運転停止を求め、九州電力に対してそう訴えた。

 川内原発1号機はこの7月、営業運転開始から40年を迎え、設計当初に想定されていた期間を超えて「延長期間」に入った。市民からはその安全性について、以前から不安の声が上がっていたという。

 南海トラフ地震の防災対策推進地域には、東海第二発電所(茨城)、浜岡原子力発電所(静岡)、伊方発電所(愛媛)、川内原子力発電所の4か所、計7基の原発がある。

 巨大地震が日本を襲ったとき、「原発と津波」を分けては考えられない。7基の原発がある地域では、浜岡原発のある静岡県御前崎市で最大19m、伊方原発のある愛媛県西宇和郡伊方町で最大21mの高さの津波が予想されている。

 東日本大震災による福島第一原発の事故では、地震の揺れそのものよりも、津波が壊滅的な被害を招き、“世界最悪レベル”の事故に至った。地震発生直後、大きな揺れにより外部電源を喪失したものの、一旦は非常用の発電機が作動する。しかしその約50分後、高さ14~15mの津波が押し寄せて建屋内外が浸水し、すべての電源を喪失。核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が起き、さらに発生した水素が建物内にたまって水素爆発まで引き起こした。

 今回の「巨大地震注意」では、新たな問題が浮き彫りになった。どの原発も「臨時情報」に伴う措置を定めていないことが明らかになったのだ。国民に対して巨大地震への注意を呼びかけているにもかかわらず、政府は悲惨な事故の可能性を孕む原発に関する、対応措置を想定していないのである。

 一連の動きを受け、元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏は、「臨時情報が出た時点で原発は即時停止すべき」と警鐘を鳴らす。

「今年1月の能登半島地震では道路が寸断され、志賀(しか)原発付近に住む約150人が孤立しました。仮に原発事故が発生しても、住民を退避させられない可能性がある以上、南海トラフ地震のリスクが高まっているならば、原発を止めると考えるのは自然なことでしょう」(小出氏)

 現在、前述した7基のうち、川内原発の2号機以外は定期検査などの理由で稼働を停止している。しかし、「停止しているから安全安心というわけではない」という。

「もちろん、運転中に比べて事故のリスクは下がります。ただ停止中でも、原子炉内にあった燃料や使用済みのものは、燃料プールと呼ばれる深い水槽に保管されている。津波の被害でその冷却機能が停止すれば、燃料が発熱して事故に繋がる可能性は否定できません」(原発関係者)

「核燃料不安」は、つねに頭をもたげている。

※女性セブン2024年9月5日号