200種類を超えるメニューに胃袋を掴まれる! プロから家族連れまで愛されまくった人情味溢れる「食堂SS」【懐かしのドライブイン探訪その3】

AI要約

木曽路に位置する人気ドライブイン「食堂SS」が高齢のスタッフと人手不足を理由に閉店することが決定した。

二代目女店主の佐藤秀美さんがお店の歴史や残念な決断について語っている。

しかし、佐藤秀美さんは別の店舗を続けるとのことで、引き続きお客さんを歓迎する姿勢を見せている。

200種類を超えるメニューに胃袋を掴まれる! プロから家族連れまで愛されまくった人情味溢れる「食堂SS」【懐かしのドライブイン探訪その3】

 急速に数を減らしている運転手のオアシス、ドライブイン。大型の駐車場を完備するドライブインはプロドライバー御用達の場所としてはもちろん、地元の馴染み客には欠かせない存在だ。平成以降、高速道路やバイパス道路網の発達で旧幹線道路の車両通行量の減少、さらにはコンビニエンスストアや大手外食チェーン店の台頭によって客足の減少も進み、かつて隆盛を誇ったドライブインは急速に数を減らしていった。残念ながら2024年4月29日をもって閉店が決まった、木曽路の人気ドライブインに訪れてみた。

 今回訪れたドライブインは、愛知県は名古屋市熱田区から岐阜県東濃地方~長野県木曽地方~塩尻市~松本市を経由し、長野市に至る幹線道路の国道19号線沿いに位置し、長野県塩尻市に店を構えるその名も「食堂SS」。開業は東京オリンピックが開催された1964年だという。そう、今年で60周年となるほど長きに渡って近隣住民やプロドライバーに愛されたドライブインだ。いつ訪れても食事を楽しむお客さんで賑わっている同店は、なぜ閉店するという決断をしたのであろうか?

「食堂SSの名前は、よく”サービスステーション”というのが由来ですかと尋ねられるのですが、じつは違います。先代の店主・佐藤 進さんの頭文字なんですよ。先代から受け継ぎ長くご愛顧いただいてきたのですが、このたび店を閉めることにしました。その理由はスタッフの高齢化と人手不足です」と話してくれたのは、二代目女店主の佐藤秀美さん。その温かい人柄で“おかあちゃん”とお客さんからも親しみを込めて呼ばれる人物だ。

 確かに高齢のスタッフが忙しい店内を切り盛りしており、体力的にも大変だろう。また、塩尻市の市内中心部から離れた同店は、通勤するだけでも大変だろうと想像できる状況だ。

 編集部が訪問したのは、閉店が差し迫ったある平日の夕方。「突然閉店しては、常連のお客さんに申し訳ない」という気持ちから、1カ月前から告知をしてきたこともあって、名残惜しそうに次々とお客さんが入れ替わり立ち代わりで来店してくれているそう。当日はそんなこともあって大繁盛している状態だった。

 店内は創業当時から変わりなく、なんだか懐かしい昭和の雰囲気。カウンターはなく、すべて4人席。入店するときに、テーブルかお座敷か選べるから、家族連れや友人同士でも都合がいい。もちろん、ひとりでも入りやすい。定食から麺類、丼物、一点物と200種類を超える豊富なメニューも人気の秘密だろう。

 この日、注文したのは一番人気の焼肉定食(970円)。焼肉、ご飯、お味噌汁はすべて熱アツでの提供。やや濃いめの味が染みていそうなお肉が食欲をそそる。味噌汁はわかめと油揚げ、シンプルなお味噌汁で美味しい。出汁が程よくきいていて、もうひと口飲みたくなってしまう逸品だ。

 ボリューム感も十分だが、追加で1品モノも注文できるので、お腹が満たされること請け合いだ。

 交通の要所ということもあり、全国のプロドライバーが空腹を満たしに集まる同店。はるばる広島から群馬へ向かうプロドライバーや、子どものころから父親の助手席で足繁く通っていたという常連のプロドライバーなど、さまざまなお客さんが集う同店。見ず知らずのドライバー同志がトラック談義に花を咲かせる光景は、まるで映画『トラック野郎』のワンシーンのようだ。

 そんな名店が閉店すると知って残念がるお客さんはじつに多いそうだが、最後に朗報を。食堂SSは2店舗あるのだが、今回塩尻市贄川の食堂SSが閉店となっても、広丘にあるお店は続けていくとのこと。“おかあちゃん”も引き続きそちらの店頭に立つそうなので、今後は広丘店を訪ねてほしい。

ショップインフォメーション

SS ドライブイン広丘店

長野県塩尻市広丘吉田1113-3

TEL:0263-86-0338

営業時間:7:00~21:30