獣害対策にICT 課題は通信費、低コスト装置の開発を福知山市が公立大に委託

AI要約

福知山市は、ICTを搭載したわなを試験導入し、獣害対策の負担軽減を図っている。

地域の高齢化と隊員不足により、ICTわなを活用した持続可能な獣害対策の仕組み作りが進められている。

通信費の問題解決を目指すため、公立大学で通信費を抑える研究が行われており、地域主体の獣害対策に期待が寄せられている。

獣害対策にICT 課題は通信費、低コスト装置の開発を福知山市が公立大に委託

 京都府福知山市は、イノシシ、シカによる獣害対策の負担軽減をめざし、ICT(情報通信技術)を搭載したわなを地域で試験導入しているが、高額な通信費が負担になっている。課題を解決しようと、西小谷ケ丘の福知山公立大学情報学部の学生たちが、ランニングコストが低い装置の開発に取り組んでいる。

 ICTわなは、わな周辺を写す動画配信機能付きのカメラと、動物が檻や柵といった形状のわなの内側に入った時に、わなのとびらを遠隔操作で閉める通信機能がついたもの。市内では、市獣害対策モデル地区の三和町川合に2基、夜久野町直見に1基が試験導入されている。わなの作動は狩猟免許を持ち、市の許可を受けた市有害鳥獣駆除隊員が行う。

 檻わな、柵わなの運用には、動物を誘い込むための餌まき、見回りといった活動が必要。餌まきなど、狩猟免許が必要ない管理を農区がしているところもあるが、これら全てを駆除隊員が行っているところが多い。最終的な捕獲は駆除隊員だけの仕事で、現在は213人が年間で約4千~5千頭のシカを捕獲している。しかし、隊員の減少、高齢化が進んでおり、今後について市は「現状が維持できるか分からない」という。

 そこで、市は、餌まきといった管理は地域で、最終的な駆除は隊員-というように役割分担を進め、持続可能な獣害対策ができる仕組み作りのためにICTわなに注目。カメラで、見回り活動の負担が減らせるとし、過疎高齢化が進む地域での獣害対策の担い手不足の解決策、地域防除の要になると考え、設備の導入促進を検討している。

 試験的に導入された地域では、対策にあたる住民らが、動物の姿をリアルタイムで観察できるため、実際に捕らえる姿を見たり、動物の状況を共有したりすることで、獣害対策への達成感や動機付けを高めることにもつながっている。

 ただ、導入にかかる費用は国が半分を補助しているものの、設置後の通信費には補助制度が無。年間で1基につき約14万円かかり、現在は市が支払っているが、「行政としても負担が大きくなっている」という。

 そのため、年間の通信費を3分の1程度にすることを目標に、4月に公立大学へ通信費を抑える仕組みの研究を280万円で委託した。市内には使われなくなって放置されたままのわながあり、開発した装置を取り付けてICT化することで、設置の初期費用を抑えながらわなの稼働数を増やしていく構想もある。

 市は、わなによる捕獲時、駆除隊員への奨励金のほか、シカ3千円、イノシシ2千円のわな管理料を、管理状況に応じて駆除隊員、あるいは農区へ支給している。通信費が抑えられれば、農区がICTわなの維持管理をする場合でも管理料で相殺できるとして、「ICTわなを使った地域主体の獣害対策の水平展開ができれば」と期待する。