岸田首相、最後までタイミングが残念だった…退陣表明の翌日に出た「4~6月期GDP統計」の好結果【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

AI要約

24年4~6月期の日本の経済動向が明らかになった。実質GDP成長率や名目GDP実額が過去最高を更新し、実質雇用者報酬もプラスに転じた。岸田首相の経済政策のタイミングの悪さも取り上げられる。

岸田首相の経済政策の一部が結果を出し始め、実質賃金がプラスに転じた。しかし、消費者物価はまだ高止まりしており、課題は残っている。

岸田首相が退陣表明したが、そのタイミングが経済成果を会見で発表できるチャンスを逃した可能性もある。経済の発表タイミングは慎重に考える必要がある。

岸田首相、最後までタイミングが残念だった…退陣表明の翌日に出た「4~6月期GDP統計」の好結果【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

“景気の予告信号灯となる身近なデータ”として、今回は「24年4~6月期実質GDP第1次速報値」を取り上げます。名目GDP実額は史上初の600兆円超えとなり、実質雇用者報酬・前年同期比は11四半期ぶりにプラスに転じました。エコノミスト・宅森昭吉氏が解説します。

24年4~6月期GDP速報・第1次速報値が8月15日に公表された。実質GDP成長率は前期比+0.8%、前期比年率+3.1%と、2四半期ぶりのプラスとなりました。また、名目GDP成長率も前期比+1.8%、前期比年率+7.4%と、2四半期ぶりのプラスとなりました。

4~6月期の名目GDP・実額は年率607.9兆円と、史上初の600兆円超えとなりました。91年10~12月期に500.2兆円と名目GDPが500兆円を超えてから、32年半かかり600兆円の節目を超えたことになります。

実質雇用者報酬・前年同期比は+0.8%と11四半期ぶりにプラスに転じました。33年ぶりの高水準となった春季労使交渉の賃上げに加え、夏のボーナスが堅調であったことがプラスに働きました。

岸田首相の経済対策は内容が良くても発表のタイミングが悪かったことと思われることが多々ありました。例えば、6月21日の首相会見で、消費者物価指数・前年同月比の月平均0.5%以上の押し下げを求め、酷暑乗り切り緊急支援策として「電気ガス価格変動緩和対策事業」を8~10月に復活実施、ガソリン補助金も年内に限り続けることを指示したことです。

今年の夏はラニーニャ現象発生が予想され猛暑が見込まれていたのにもかかわらず、電気・ガス代の補助金は延長しないことに一旦はなっていたのです。「電気ガス価格変動緩和対策事業」は6月支払い分で半分がなくなり、7月からは完全になくなりました。これに伴い、消費者物価は0.48%押し上げられることになりました。岸田首相は実質賃金プラス化のハードルを自ら上げていました。6月21日の会見で、慌てて緊急支援策を復活させた感じがしました。

なお結果的には、実質賃金はボーナスの伸び率が高かったことで、6月に前期同月比+1.1%と27ヵ月ぶりにプラスにはなりましたが、デフレーターの帰属家賃を除く消費者物価指数は前年同月比+3.3%とまだ高いので、名目の前年同月比が+2.3%となった、きまって支給する給与の実質の前年同月比はまだマイナスのままです。

岸田首相が8月14日に退陣表明されました。外交日程などへの配慮でこの時期になったのではという解説もありますが、もう1~2日遅くすれば、「名目GDP初の600兆円超え。実質雇用者報酬・前年同期比11四半期ぶりにプラス」といった経済面の成果を会見の中で発表できたわけです。経済に関する発表のタイミングは、最後まで残念なものになったと思います。