猛暑でも屋外労働が当たり前の70代農家に学ぶ“熱中症対策の知恵”「長袖・長ズボンで肌の露出を防ぐ」「炎天下の日中は働かない」

AI要約

2024年の夏、猛暑で熱中症による救急搬送が増加。農業従事者も対策に苦心。

農家のKさんは時間を区切り、暑い時間帯は働かず休む工夫をしている。

日差しからの逃げ場を模索し、長袖・帽子などで対策を行っている。

猛暑でも屋外労働が当たり前の70代農家に学ぶ“熱中症対策の知恵”「長袖・長ズボンで肌の露出を防ぐ」「炎天下の日中は働かない」

 2024年の夏は連日の猛暑が続いている。東京消防庁によると、1月から7月末までに救急隊が出場した件数は54万2256件で、統計を始めた1936年以降最多を記録した。増えた要因は熱中症で救急搬送される人の増加で、こちらも7月末までで4183人と前年を上回るペースとなっている。

 外で長時間労働をするのが当たり前である農業従事者にとっても、猛暑の影響は軽視できない。場合によっては自身が熱中症になりかねないため、熱中症対策は必須のはずだ。実際にどのような対策を講じているのか、話を聞いた。

 中国地方でアスパラガスをつくっている農家のKさん(70代男性)。毎日農作業に出かける際、特に気を付けているのは「時間」だという。

「日の出の朝5時ぐらいに起きてしっかり朝ご飯を食べ、6時頃から仕事をして、9時には家に帰って休みます。ポイントは時間で区切るのではなく、少しでもいつもより日差しが強いなと感じたら切り上げることです。最近は、朝でも昔の昼間のように暑いなと思うことも増えたので」

 日が昇った後は、ぐんぐん気温が上昇する。Kさんは「日中は働けないので、働かない」と言う。

「炎天下では、直射日光を浴びているだけで体力を消耗しますし、畑は日陰のような“逃げ場”がない。暑い日中は、無理せず畑には出ないようにしています。その間ゆっくり休憩や家事をして、農作業は16時くらいから再開します。昼寝の時もエアコンを効かせます。うちでは24度に設定したうえで、エアコンの風が体に直接当たらないよう、毛布にくるまり寝ています」(Kさん。以下「」内同)

 日中、気温が高い時間帯は、労働時間ではなく休み時間。極力暑い時間に動かないこと、暑い場所を避けることが、熱中症対策の自分なりの最適解だとKさんは言う。

「できるだけ屋外の作業を減らすことも意識しています。野菜の選定やラベル張りといったことは日陰で行ない、エアコンが無い場所でも業務用扇風機で風を送り込んで涼しい環境を作ります。空気を循環させるだけでも体感の暑さはかなり違ってきます」

 とはいえ、農業をしている限り日差しから完全に逃げられることはない。Kさんは、恰好や準備に気を遣うことで対策をしているという。

「通気性のよい生地の長袖・長ズボンで肌を露出しないようにします。一見暑いと思われそうですが、肌に日が当たらないほうが体へのダメージが少なく、むしろ半袖よりも快適です。帽子も必需品で、首元までしっかりと隠れるものを着用して外に出ます。2Lの水筒にお茶を入れて30分毎に水分を摂りつつ、塩分・糖分補給のためにはおやつも欠かせません」

 いまや「危険」とまで言われるようになった夏の暑さ。日差しの強い時には無理に動かないという知恵は、覚えておいて損はないのかも。(了)