コカ・コーラを日本一売った営業マンが実践!アンチ客も味方につける、稲盛和夫の「たった4文字」の教えとは?
四国コカ・コーラ ボトリング社で営業職として活躍し、日本コカ・コーラ社主催の全国セールスフォースコンテストで第1位を獲得した山岡彰彦氏が「稲盛和夫の教え」について語る。ある雨の日、アンチ・コカ・コーラの店で驚くべき出来事が起こる。
社長の意外な言葉に触れる中で、稲盛和夫の「たった4文字」の教えが紹介される。敬天愛人や敬店愛品というコンセプトが示唆され、営業の鍵を握る重要性が語られる。
この物語は、お店を敬い、商品を愛する姿勢の重要性を示唆しており、人との繋がりや信頼構築が営業成功につながることを教えている。
四国コカ・コーラ ボトリング社で営業職として活躍し、日本コカ・コーラ社主催の全国セールスフォースコンテストで第1位を獲得した山岡彰彦氏の著書『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』から一部抜粋して、同氏の営業ノウハウをお届けします。今回のテーマは「稲盛和夫の教え」について。
● アンチ・コカ・コーラの店 「依岡酒販店」社長の意外な言葉
その日は目が覚めた布団の中からでも強い雨が降っていることがわかる朝でした。
外回りの配達を抱えるルート営業にとって、雨の日はなんとも言えず憂鬱な気持ちになります。朝礼を済ませ、一通り準備を終えたら着替えの制服を助手席に載せて、タオルを首に巻いて出発です。何軒かの店を回り、依岡酒販店に来ました。
市内でも比較的大きな規模で事業を展開していますが、私たちには少々風当たりが強く、いわゆるアンチ・コカ・コーラのお店です。その日は雨も降っているので、注文の製品をトラックから降ろし、お腹に抱えながら足早に倉庫へと運び入れました。事務所の入り口でいつものように事務員さんに伝票を渡そうとしていたその時、奥から社長が私を呼びます。
「おい、こっちに来てくれるか」
少し躊躇する私。なぜなら私は全身ずぶ濡れ状態です。水滴が床を濡らしてしまうと掃除するのが大変ですから「はい。いえ……、ここで……」と言い終わらぬうちに「何をしているんだ。早く来い」との次の声が飛びます。
私は社長の言葉のまま彼のデスクの前まで進みます。
「君がこの前から勧めてくれていた自販機の件だが、あれ、買うことにしたよ。契約するから用意してくれるか」
● 稲盛和夫の 「たった4文字」の教えとは?
「はあぁ」と私。なんとも狐につままれたような話です。
これまで何度も提案書をつくって勧めていたのですが、けんもほろろの状態で取り付く島もありませんでした。
私たちの会社の条件は他社のものより大きく見劣りし、ましてや社長は我々のアンチです。時には厳しい口調で「あんたのところは……」と説教めいた話も聞かされます。動揺している私に社長が続けます。
「わしの席からは窓越しに配達する業者の様子が見えるんじゃが、君は商品が雨に濡れないようにとお腹に抱えて持ってきた。ところが他の会社の配達は商品を雨除け代わりに頭の上にして倉庫に運び入れているじゃないか。それは商品を大事にしていないどころか、わしら取引先のことを大切に思っていないということじゃ。君は商品が雨に濡れないようにと大事に抱えて持ってきた。わしはそういう人間と商売がしたいんじゃ」
事務員さんが横からタオルを渡してくれました。
「まぁ、ずぶ濡れねぇ。風邪を引かないようにね」
私の目からは大粒の涙がこぼれていましたが、気づかれないように頭からしたたる水滴を拭き取りながらタオルに顔をうずめました。
稲盛和夫さんがよく仰っていた「敬天愛人」という西郷隆盛の言葉があります。これは「日ごろから修養を怠らず、天を敬い、人を愛する境地に到達することが大切である」ということを説いています。
私たちは、「お店を敬い、自分たちの商品を愛する」という「敬店愛品」という言葉を使っていました。この思いこそが営業です。それを人は必ず見ています。