アウディのF1へのアプローチは「根本的に間違っている」とエディ・ジョーダン。スイスに拠点を置くザウバーの買収を疑問視

AI要約

アウディがザウバーを買収し、2026年のF1プロジェクトを進めているものの、地理的な位置やチームの実績に関する批判がある。

元F1チームオーナーのジョーダンは、イギリスを拠点とするチームが成功するための重要性を強調し、アウディの方針に疑問を呈している。

アウディのF1プロジェクトがどのように進展するか、将来的な成果が楽しみである。

アウディのF1へのアプローチは「根本的に間違っている」とエディ・ジョーダン。スイスに拠点を置くザウバーの買収を疑問視

 元F1チームオーナーのエディ・ジョーダンは、アウディのF1プロジェクトへのアプローチは、パートナーであるザウバーの所在地に本質的に欠陥があると考えている。

 アウディはザウバーを買収して彼らの事業を活用し、アウディの次世代F1パワーユニットを搭載する2026年のシャシーを開発しているところだ。インゴルシュタットのアウディの関連会社として、論理的にザウバーはアウディのF1への取り組みも運営することになる。しかしこれまでのところ、プロジェクトの進展は順風満帆ではない。

 マクラーレンF1のマネージングディレクターを務めたアンドレアス・ザイドルが、アウディ/ザウバーの2026年プログラムのリーダーとして起用された。しかし、ザイドルとアウディの総代表を務めるオリバー・ホフマンが内部で衝突したため、両者は解任され、元フェラーリF1チーム代表のマッティア・ビノットがアウディのF1運営を率いることになった。

 プロジェクトの土台をさらに強化したのは、レッドブルのスポーティングディレクターを務めるジョナサン・ウィートリーが、2025年のある時点でチーム代表としてアウディに加入するという木曜日の発表だった。

 アウディの人事が大きな注目を集めたものの、ジョーダンはチームの本部をスイスのヒンウィルに留めるという判断に納得していない。ジョーダンは、F1の中心地はイギリスであり、そこには他では類をみない豊富な才能、専門知識、インフラがあると主張している。

「アウディについて私は大きな疑問を感じている」と、ジョーダンはデイビッド・クルサードがホストを務める最新の『Formula for Success』ポッドキャストで語った。

「あなたと私はアラン・マクニッシュ(アウディのコーディネート担当モータースポーツディレクター)の非常に親しい友人であり、我々は彼の成功を願っている。しかし、彼が引き受けているのは巨大な仕事と作戦だ」

 ジョーダンはさらに、F1においてイギリスを拠点とするチームが歴史的に優位にあったことを浮き彫りにし、この地域のレース文化の重要性とそのサプライチェーンの効率性を強調した。またジョーダンはこの点と、イギリスの外で仕事をすることで非効率になると考えられる事柄を対比させ、重要なコンポーネントを確保するのに遅れや困難が生じる可能性を挙げた。

「マシンをスイスから製造することは、大変に大きな要求だ。スイスやドイツを拠点とするチームが、世界タイトルを獲得したのを最後に見たのはいつだろうか?」

「我々はトヨタがしたことを目にした。彼らは参入し、あのようにやろうとしたがうまくいかなかった。だからこれは大きな要求だ」

「それにレースカーの製造は、イギリスの特にノーサンプトン、オックスフォードシャー、その他さまざまな地域で行うことが一番だと言わざるを得ない。彼らは非常に豊富な知識を持っている。彼らは勝てるようになる、達成する、もしくはベストを尽くすという考え方を持っている。そしてこの地域のサプライヤーは、そこの人々が直面する複雑さとスケジュールを理解している」

「一方では、スイスで製造される機械を注文することになる。彼らは4日や、4週間、4カ月が必要かもしれないという納期を伝えてくるだろう。そしたらできることは何もない」

「だがイギリスにいる場合は、そのサプライヤーの上の立場になって、『これをやらなければ、これ以上の仕事がなくなるだけだ。だから、すべてを捨ててこれをやった方がいい』と言えるだろう。彼らは、それを成し遂げるために昼夜を問わず働く。それがレース文化があり、DNAに刻まれているという価値観だ。アウディがやっていることは根本的に間違っていると思う」

 ジョーダンの批判はアウディの地理的な位置を超えて広がった。彼はまた、近年最高のレベルで競争するのに苦戦しているザウバーのチーム自体についても懸念を表明した。窮地に立たされたチームは、2024年のチャンピオンシップでまだポイントを獲得できていない。ジョーダンは、この統計がより根深い問題を示していると考えている。

「彼らが買収したチームはザウバーだ。私はピーター・ザウバー(創設者)を尊敬している。しかし、気づかれているはずだが、いい人たちは何も勝てないものなのだ。残念なのは、グランプリ優勝という点では、ピーターは一度も勝てていないということだ」

「だが、今年成し遂げられなかったことは、彼にとって大きな恥に違いない。彼らはポイントを獲得していない唯一のチームであるということだ。やはり、彼らは絶対的に最下位だ。それは喜ぶようなことではないし、私は彼らに失望している」

 クルサードが、ザウバーが実際には2008年カナダGPでロバート・クビサによって1勝を挙げていると指摘すると、ジョーダンはBMWが唯一の勝利を収めたと主張した。

「ピーター・ザウバーは、人として、チームとして、そしてエントラントとして、タイトルを獲得したり、レースに勝ったりしたことはない。BMWがレースに勝ったのだ。ふたつはまったく異なるものだ」

 しかしながらクルサードは、アウディはイギリスに運営の拠点を置いた方が、チームの利益のためにもよかったというジョーダンの意見に同意した。

「もし本当に世界チャンピオンやグランプリ勝者になろうとしているのなら、イギリスは長い間、そうしたことを達成するためのバックボーンとしての地位を確立してきたと思う」とクルサードは語った。

「もちろん、フェラーリは例外的な存在だが、そうした結果を出すには主にヨーロッパの人員が必要だった。しかし、(アウディが)成功するかどうかは、時間が経てば分かるだろう」

[オートスポーツweb 2024年08月07日]