トヨタ、ホンダ、マツダ…「信頼のニッポン」の自動車メーカー5社が不正問題を起こした背景とは?

AI要約

今年6月、自動車メーカー5社による型式指定申請における不正問題が発覚し、出荷停止の対象となった車種がある。

国交省の大規模な調査指示により、複数メーカーが不正行為を公表する事態となった。トヨタ自動車も不正が指摘され、出荷停止やガバナンス改革が迫られた。

自動車メーカーの不正問題の背景には、厳密な型式認証プロセスと数多くの試験項目が存在し、その調査の過程で不正が明るみに出たと考えられる。

トヨタ、ホンダ、マツダ…「信頼のニッポン」の自動車メーカー5社が不正問題を起こした背景とは?

大谷 達也

今年6月、自動車の大量生産に必要な「型式指定」の取得において、自動車メーカー5社が不正を行ったことが明らかになった。「信頼」を旨とする日本メーカーがなぜ?──その背景を探ると、メーカーと国土交通省の関係における構造的な歪(ゆが)みが見えてきた。

今年6月3日に報じられた国内自動車メーカー5社による型式指定申請における不正問題は、国内外に大きな波紋を巻き起こした。

国交省の発表によれば、不正を報告したのはトヨタ自動車、ホンダ、マツダ、ヤマハ発動機、スズキの5社で、その対象は計38車種。うち3メーカーの計6車種が出荷停止に追い込まれた。内訳はトヨタ自動車3車種、マツダ2車種、ヤマハ発動機1車種で、ホンダとスズキの該当車はいずれも生産終了後のため出荷停止の対象とならなかった。

自動車メーカーが関連する不正問題がこれまでになかったわけではないが、これほど多くの企業から多数の事案が発覚したのは、おそらく史上初のことだろう。まして、日本企業は不正にくみしない真面目な姿勢で世界的に高い評価を受けてきた。それだけに、「なぜ日本メーカーが?」という疑問の声が各国から噴出したのは当然といえる。

では、このような大規模な不正問題はどうして起きたのだろうか?

ことの発端は、2022年以降、日野自動車、豊田自動織機、ダイハツなどで型式指定申請などに関する不正が次々と明らかになったことにある。これを受けて型式認証を管轄する国交省は、国内の自動車メーカーや装置メーカーなど計85社に不正行為に関する調査報告の実施を指示。各メーカーが過去にさかのぼって調査した結果、冒頭で述べたとおり5社が不正を報告したのである。

各メーカーが調査した件数は実に膨大で、トヨタ自動車だけでも10年間でおよそ7000件に上る。しかも、1件1件の型式認証には数十とも数百ともいわれる試験項目が含まれているので、その合計は少なく見積もっても数万、場合によっては数十万項目にも達する。それら全てを調査し、あぶり出された不正の数が、トヨタ自動車でいえば7車種6事案だったのだ。

国交省がこれほど大規模な調査を指示しなければ、一度に複数のメーカーが不正行為を公表することはなかっただろう。場合によっては、それらの多くは闇に葬られ、表沙汰にならなかった恐れもある。今回の「不正問題が大量に発覚」した背景には、このような事情があったことを、まずは認識すべきだろう。

トヨタ自動車は7月5日にそれまで「調査中」としていた認証プロセスの調査を完了し、「新たな事案は確認されませんでした」と発表した。だが、今度は国交省から「さらに7車種で不正があった」と指摘されたため、トヨタ自動車はミニバン「ノア」「ヴォクシー」の出荷を停止。さらに7月31日には国交省からトヨタ自動車に対し、ガバナンス改革を求める是正命令が下される事態となった。一度は収まったかに見えた火種が再燃した格好だ。