損保不祥事「法令順守重視しない企業文化」法改正は「今後のテーマ」 井藤英樹金融庁長官

AI要約

金融庁の井藤英樹長官は、損害保険大手4社による顧客情報漏洩などの不祥事を遺憾がり、コンプライアンスを重視すべきと指摘。

過去のカルテルや保険金不正請求、最近の顧客情報不正閲覧問題に言及し、金融庁が企業に報告を求めていることを明らかにした。

さらに、銀行や証券会社による顧客情報共有の問題にも言及し、FW規制緩和の議論が停滞する懸念を示した。

損保不祥事「法令順守重視しない企業文化」法改正は「今後のテーマ」 井藤英樹金融庁長官

金融庁の井藤英樹長官は7日までに、産経新聞の取材に応じた。顧客情報の漏洩など損害保険大手4社が絡む不祥事が相次ぐ事態について「大変遺憾だ。必ずしも法令順守(コンプライアンス)を重視していない企業文化がある」と強く批判した。同庁の有識者会議が6月にまとめた損保業界改革の報告書を踏まえ、監督指針や法律の改正も今後の議論のテーマになるとの認識を示した。

損保業界では昨年、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の4社による企業向け共同保険の契約で事前に価格調整をするカルテルが発覚。中古車販売大手ビッグモーター=現WECARS(ウィーカーズ)=の保険金不正請求問題などもあった。

今年に入ってからも、乗り合い代理店を通じた競合他社の契約者情報の不正閲覧や、損保ジャパンと東京海上の社員が出向先の代理店で得た他社の顧客情報を出向元と不正に共有する事案が発覚した。金融庁は4社に個人情報の取り扱いなどについて、8月末までの報告を求めている。

また、井藤氏は、三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の銀行や証券2社で顧客の意向に反して情報を共有していた事案にも言及。業界トップによる不正が明るみに出たことで、銀行と証券の情報共有を規制する「ファイアウオール(FW)規制」の緩和に向けた議論が停滞する懸念が出ている。

井藤氏は「規制が無くなれば自由になるということではない」とした上で、今後の検討の方向性は「より実効的に顧客情報を管理する体制整備を各社ができるのか問うものになる」と語った。(永田岳彦)