「持続的な企業価値向上に関する懇談会」が中間報告をとりまとめ

AI要約

経済産業省が持続的な企業価値向上に関する懇談会の中間報告を発表した。報告では、株主と企業の価値観のずれや長期視点の経営の重要性などの課題に言及し、企業経営の改善策が示唆されている。

報告では、経営チーム体制の強化や取締役会の実効性の強化、さらに資本市場の活性化についても検討が行われている。サステナビリティを意識した経営や持続的な成長を目指す企業にとって示唆に富む内容となっている。

最終的な提言をまとめる懇談会は、今後も議論を重ねることが予定されている。

「持続的な企業価値向上に関する懇談会」が中間報告をとりまとめ

経済産業省は6月、有識者でつくる「持続的な企業価値向上に関する懇談会」の中間報告をとりまとめた。デフレから脱却しつつある日本において、企業の収益率や企業価値の向上をどのように進めればよいのか、最終的な提言に向けた議論の方向性を示した。

懇談会は、日本経済が、投資・賃金・物価のすべての面で成長する方向に転換していくため、企業経営に提言する方策を検討するため、設立された。

中間報告では、2014年に経済産業省の研究会(座長・伊藤邦雄一橋大名誉教授)がまとめた企業の成長指針「伊藤レポート」における課題に対し、10年経った現状と今後の対応の方向性を示した。

伊藤レポートは、主に以下の5つの課題を指摘していた。

「企業価値に対する企業と投資家との間の認識のずれ」「長期視点の経営の重要性」「経営チーム体制の強化の必要性」「取締役会の実効性の強化」「資本市場の活性化」に対する検討内容を紹介する。

課題①:企業価値に対する企業と投資家との間の認識のずれ

企業は多様なステークホルダーの価値増大などを重視する一方、投資家は株主価値に重きを置く傾向にあり、企業価値の捉え方について「更に議論を重ねていく必要がある」と指摘した。

課題②:長期視点の経営の重要性

社会のサステナビリティ(気候変動、人口増、食糧不足など)の観点を踏まえ、長期視点の経営の重要性を指摘。中期経営計画の策定が目的化・形式化している例もあるとして、計画のあり方を再考する必要性にも触れた。

課題③:経営チーム体制の強化の必要性

変化が激しいグローバルな経営環境の中で、十分な能力・経験を伴ったリーダーシップの発揮が重要であるとし、CFO(最高財務責任者)・FP&A(ファイナンシャルプランニング&アナリシス)や、CHRO(最高人事責任者)・HRBP(HRビジネスパートナー)機能を強化し、人材を育成していくことが必要だと指摘した。

課題④:取締役会の実効性の強化

取締役会が実効的な議論を行い、経営の意思決定を迅速化させることが必要だとし、取締役会の役割を明確化することや、経営者の選解任の機能を強化すること、独立した立場から企業の持続的な成長を実現できる社外取締役を選任することの必要性に言及した。

課題⑤:資本市場の活性化

持続的な企業価値の向上のために「投資家との協働による企業価値創造に目を向ける必要がある」とし、投資資産の運用を行うアセットマネージャーの人材育成や質の高い企業情報開示の重要性を訴えた。

中間報告は、社会のサステナビリティを意識した長期視点の経営、変化が激しい経営環境における経営体制の強化などを打ち出しており、事業承継によって経営を持続させていこうとする企業にとっても、示唆に富むものとなっている。

懇談会は今後、最終的な提言をまとめるとしている。