「営業重視」「上意下達」の企業文化を刷新へ、損保ジャパン・SOMPOの両トップに聞く【けいざい百景】

AI要約

中古車販売の旧ビッグモーター(BM)が自動車保険金を不正請求した問題で、業務改善命令を受けた損害保険ジャパンと親会社SOMPOホールディングス。経営の不祥事を受け、風通しの悪さを改善し、情報共有の取り組みを行っている。

現場と経営陣の距離感の遠さや報告の遅れを改善するため、社内の風通しを良くし、情報共有の体制を整えている。また、社内向けサイトを開設し、情報収集を促進させている。

営業重視の企業文化を改め、経営判断のプロセスや評価軸を改善。不正請求に対する対応も強化し、正確な支払い漏れのチェックシステムを構築している。

「営業重視」「上意下達」の企業文化を刷新へ、損保ジャパン・SOMPOの両トップに聞く【けいざい百景】

 中古車販売の旧ビッグモーター(BM)が自動車保険金を不正請求した問題で、今年1月に金融庁から業務改善命令の行政処分を受けた損害保険ジャパンと親会社SOMPOホールディングス。損保ジャパンはBMが故意に車を傷つけ不正請求した可能性を認識しつつ、いったん停止した事故車の紹介を再開。不正を助長させる経営判断を行ったことから、親会社を含む経営トップが引責辞任する事態に発展した。「営業重視」や「上意下達」の企業文化について刷新を図る損保ジャパンとSOMPOの両トップに話を聞いた。(時事通信経済部 竹原伸)

 ―BM不正の発覚後、現場から経営陣にすぐに報告されなかった。

 経営と現場の距離感が遠かったことが原因。そのため、社内の風通しを良くする取り組みを始めた。具体的には、全国各地の営業店に出向いて現場の従業員と話し合ったり、社内放送に2週間に1度は出演して、会社の現状を伝えるようにしている。

 ―損保ジャパンがBM不正を把握した後、親会社SOMPOへの報告が遅れた。

 われわれの認識不足もあるが、社内の情報を上げにくい風通しの悪さがあった。私が損保ジャパンの経営陣に入った時には、グループ全体のリスク情報を親会社に報告する認識は全くなかった。そのため、(BM不正を受けて)親会社に報告する基準をつくった。また、損保ジャパンと親会社の役員を兼務するグループ・チーフオフィサー(CxO)を設け、リスク情報を共有できる形にした。

 ―経営陣まですぐに情報が集まる取り組みは。

 現場には泥の付いたタマネギのように、不祥事につながる情報や(業務効率化につながる)アイデアなど、さまざまな情報がある。そうした情報が集まるよう社内向けサイト「どろたまBOX」を2月末に開設した。3月末までの1カ月で約150件(6月末までで約630件)の投稿があった。驚く内容も届くが、上がってきた情報は役員で共有できる。社員も情報を上げやすくなったと思う。

 ―経営判断を誤らないための方策は。

 これまでは社長もしくは担当役員が決めるべき案件なのか決裁権限が曖昧だったので、それを明確化した。また、BMとの取引再開は30分程度の打ち合わせで決めてしまったので、経営の重要議題は「関連役員会議」を開いて決めるようプロセスを改めた。

 ―営業重視の企業文化を改めるための取り組みは。

 営業目標はこれまで本社がつくっていたが、現場で目標設定できる形にした。人事評価でも今まではトップライン(保険料収入)やマーケットシェアを増やすと、プラス評価の「白丸」が2つ付いた。これからは業務品質や地域への貢献度合いなども評価軸に加え、営業重視のやり方を改める。

 ―不正請求にどう対応するか。

 かつての保険金不払い問題もあって、支払い漏れがない体制は構築した。ただ、請求額が正しいかチェックできていなかったので、それを確認できるシステムづくりを進める。

 ―昨年7月、BMに損害賠償請求する準備を始めたと発表したが、進捗状況は。

 法的手続きも含めた検討を進めている。BM関連で当社に不正請求された可能性のある事案は約11万5000件あった。不正かどうかの検証はすべて完了した(6月末時点)。不正請求の内容や金額なども明らかになってきているが、まだ確認を進めている。