パナソニック、2024年度第1四半期決算 国内の車載電池需要減やテスラの生産調整などがマイナスに影響するも連結売上高は4.5%増の2兆1217億円

AI要約

パナソニックホールディングスは2024年度第1四半期の業績を発表。車載電池事業が低調で売上減、テスラ製造ライン改善に伴う減産などが影響。

車載電池の需要は緩やかな成長が見込まれ、IRA補助金の対象車種増加で需要が回復。IRA関連資金化による資金調達計画も進行中。

オートモーティブ部門では固定費増加や販売不振の中で、合理化や価格改定により増益。全体的には増収減益の見通しである。

パナソニック、2024年度第1四半期決算 国内の車載電池需要減やテスラの生産調整などがマイナスに影響するも連結売上高は4.5%増の2兆1217億円

 パナソニックホールディングスは7月31日、2024年度第1四半期(2024年4月~6月)連結業績を発表した。発表によると、車載電池などを担当する「エナジー」の売上高は、前年同期比11%減の2119億円、調整後営業利益が85億円減の217億円となった。なお、IRA(Inflation Reduction Act=インフレ抑制法)の影響を除くと、売上高は前年同期比12%減の2320億円、調整後営業利益が39億円減の55億円となる。

 パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「車載電池は国内工場の需要減が継続したほか、原材料価格の低下などにともなう価格改定があり減収。また、北米ではテスラが製造ラインの改善を行なったため、それにあわせて⼀時的な生産調整に対応した。第1四半期は減産となったことがマイナスに影響した。また、和歌山工場(和歌山県紀の川市)およびカンザス工場(米国カンザス州)の立ち上げ費用の増加なども減益につながった。和歌山工場は2024年度第2四半期から、4680セルの量産を開始する予定であり、カンザス工場は、2024年度第4四半期に、2170セルの量産開始を目指している」と説明。

 現在パナソニックグループでは、住之江工場(大阪市大阪府)で生産している車載電池を、テスラのモデルSおよびモデルX向けに供給しているが、これらの車種の生産が横ばいであるため、国内生産は低調に推移。そのため固定費の削減や生産品の振り分け、顧客開拓を進めているところだ。だが、材料価格の低下などにともなう価格改定も、現時点ではマイナスに働いているという。

 また、ネバダ工場(米国ネバダ州)での車載電池の減産について梅田CFOは、「製造ラインの改善にともなう、車載電池の減産は当初から想定をしていたものである」と言及した。一方、世界規模でのEV(電気自動車)需要の低迷が指摘されていることに対しては、「以前のような急激な成長でないのは確かであるが、パナソニックグループが車載電池事業を行なっているのは、日本と米国であり、米国市場では緩やかな成長ではあるが、前年よりも出荷台数は増えている。足下ではIRA補助金の対象車種の増加もあり、需要は回復している。第2四半期以降は好調な販売を見込んでいる」との見方を示した。

 今回の決算では、IRAに関して2023年度の補助金の大半を、第三者に権利を売却することを決定したと発表。権利売却にともなう資金化コストとして55億円を第1四半期に計上しており、第2四半期以降に、1000億円弱が資金化されることになる。

 このIRAは、2022年8月に成立した法律で、過度なインフレの抑制とエネルギー政策を推進することを目的に、電池セルや電池モジュールを米国で生産し、EV向けに販売した際に、税控除が受けられる仕組みで、パナソニックグループがネバダ工場で生産している車載電池がこの対象となり、2024年度第4四半期から稼働するカンザス工場も、今後はIRAの対象になる予定だ。

 梅田CFOは、「資金化の時期は、当初想定よりも約2年の前倒しになる。相手は米国企業であり、巡りあわせがあったこと、経済的合理性が認められたことから、資金化することにした。資金はIRAの主旨にあわせて、米国におけるエネルギー対策に活用していく」とした。

 米国大統領選挙の行方次第では、IRA法の見直しが行なわれる可能性も指摘されているが、「IRA法案の今後の行方や、当社の資金繰りといった問題ではない。仮に政権が代わっても、すぐにIRA法はなくなるとはいえない」と梅田CFOは説明する。なお、車載電池と同じエナジーセクターにおいては、産業・民生分野において、蓄電システムが好調に推移しており、生成AI市場の拡大によってデータセンター向け蓄電システムが好調だという。

 一方、オートモーティブの第1四半期の業績は、売上高は前年同期比7%増の3636億円、調整後営業利益が52億円増の108億円となった。

 車載コックピットシステムでの一部商品の生産終了や、中国での販売不振、自動車メーカーの減産の影響があり、為替影響を除くと前年同期比1%の減収だが、調整後営業利益では、研究開発費や人件費などの固定費増加の影響はあったものの、機種構成の良化や、部材価格の高騰を受けた価格改定、合理化推進などの取り組みによって増益になったという。

 なお、パナソニックグループ全体での2024年度第1四半期連結業績は、売上高が前年同期比4.5%増の2兆1217億円、営業利益は7.3%減の838億円、調整後営業利益は9.2%減の843億円、税引前利益は3.7%減の1047億円、当期純利益は64.8%減の706億円の増収減益となった。

 また、2024年度の通期見通しに変更はなく、売上高は前年比1.2%増の8兆6000億円、営業利益は5.3%増の3800億円、調整後営業利益は15.4%増の4500億円、税引前利益は1.1%増の4300億円、当期純利益は30.2%減の3100億円としている。

 そのうち、エナジーの業績見通しは、売上高が前年比4%減の8770億円、調整後営業利益は164億円増の1110億円。IRA補助金を除くと、売上高は前年比4%減の9780億円、調整後営業利益は162億円増の240億円としているほか、オートモーティブは、売上高が前年比2%減の1兆4600億円、調整後営業利益が18億円増の430億円を見込んでいる。