「俺はベンツを3台、ラーメン屋のスープに溶かした」 プロレスラー川田利明もハマった「飲食店で失敗してしまう人の典型例」

AI要約

元全日本プロレスのレジェンドレスラーで、現在は東京都世田谷区にてラーメン店「麺ジャラスK」を経営する川田利明氏が、ラーメン店経営の裏側と飲食業界の暗部を赤裸々に語る。

川田氏は原価率の計算を怖れていたが、美味しい料理だけでは成功しないことを痛感する。

日本には約3万軒ものラーメン屋があり、競争が激しい中で「旨いものを作る」だけでは不十分な時代になっている。

「俺はベンツを3台、ラーメン屋のスープに溶かした」 プロレスラー川田利明もハマった「飲食店で失敗してしまう人の典型例」

元全日本プロレスのレジェンドレスラーで、現在は東京都世田谷区にてラーメン店「麺ジャラスK」を経営する川田利明氏。知られざるラーメン店経営の裏側と、飲食業界の暗部を赤裸々につづった著書『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』(宝島社文庫)の中で、「俺はベンツを3台、スープに溶かした」と衝撃の告白をした川田氏に、地獄を見たからこそ言える「成功のための条件」を教えてもらった。

「川田さん、ラーメンの原価率はどのぐらいなんですか?」

開店から少し経った頃、そんなことを聞かれて、ハッとしたことがある。

まったく考えていなかった、と言ったらウソになるけれども、細かく計算するだけの余裕がなかった。いや、細かく計算してしまうと、これじゃ何百杯売っても、たいした利益にならないよ、とわかってしまうのが怖かったのかもしれない。

ちゃんと原価率を計算して、ラーメン一杯につき、どれだけの利益が出るのかを知っておくのは「経営者」として当たり前のこと。一般的に、ラーメン屋を回していくには一日50~80杯が最低ノルマというのは今でこそ知っているけれど、そこで「料理人」としての理想と、初心者ゆえの無知ぶりが出てしまった。

「原価率なんて、細かいことはあとで考えればいい。とにかく、今は美味しい料理を出すこと。そうすれば必ず、お客さんは集まってくる!」

この自己陶酔、飲食店で失敗してしまう人の典型例です。

もちろん大前提として、美味しい料理を提供するのは大切なことではあるけれども、それが集客にすぐ結びつくほど、飲食の世界は簡単ではない。

今、日本には約3万軒ものラーメン屋が存在する。

数を聞いてもピンと来ないかもしれないけれども、町でよく見かける牛丼チェーンと比較してみよう。牛丼の大手3社の店舗数をすべて足してもたった4100店ぐらいだというから、いかにラーメン屋の数が多いかがわかるだろう。あれだけ目につく看板の、7倍以上もあるんだから。

当然、どの店も「旨いラーメンを食わせる」という部分で本気になって取り組んでいるわけで、旨いのは当たり前だし、それは最低条件。そこにプラスアルファがなければ、お客さんはやって来てくれないし、人気店になんてなれない。

ただ、そうじゃない発想も必要なのだろう。ある大手ラーメンチェーン店の社長がテレビに出ているのを見たんだけど、その社長の言葉に俺は絶句してしまった。

「旨いものを作る必要なんてない!」

飲食店を経営する社長が、こんなことを言ってもいいのか? と耳を疑ったが、その後の説明を聞いて、なるほどな、と納得した。