「連泊」需要狙うホテルが増加 訪日客の長期滞在、オーバーツーリズム対策も

AI要約

フォーシーズンズホテル大阪が開業し、畳敷きの客室階を設け連泊需要に対応する

連泊需要の高まりにより、ホテル業界では中長期滞在型の施設を増やす動きが活発化

連泊を通じて交通量が減り、オーバーツーリズム対策や環境負荷軽減にも貢献する

「連泊」需要狙うホテルが増加 訪日客の長期滞在、オーバーツーリズム対策も

活況のインバウンド(訪日客)市場を狙い、連泊対応を強化するホテルが増えている。欧米など遠方からの訪日が増えてニーズが高まったことに加え、オーバーツーリズム(観光公害)対策にも有効とみられるためだ。8月1日に開業する超高級ホテル「フォーシーズンズホテル大阪」(大阪市北区)は旅館の強みを取り入れた畳敷きの客室階を一部に設け、一度の滞在で異なるタイプの客室を使う連泊需要の取り込みを図る。

同ホテルはカナダのフォーシーズンズブランドとしては大阪初進出となり、全175室のうち21室に畳で過ごせる旅館風の客室がある。館内には大浴場やサウナ、貸し切り風呂も設け、随所に旅館の良さを取り入れた。

アレスター・マカルパイン総支配人は「一度の旅で(西洋のホテルと旅館の)2つの異なる滞在というユニークな体験ができる」と述べ、3泊以上の連泊に注力する考えを強調した。宿泊料金は最安でも1泊1室約15万円からと高額だが、「ブランド認知は高く、リピーターも増えるはず」と集客に自信をみせる。

連泊需要の高まりについて、英調査会社ユーロモニターインターナショナルは「新型コロナウイルス禍後、世界的に1回の旅行期間は長く、年間の回数は少なくなる傾向にある」と指摘する。

各ホテルも取り込みの強化に動いている。神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ(神戸市東灘区)は全268室のうち27室を、来年の大阪・関西万博に向けて簡単な調理ができるスペースを設けるなど中長期滞在型に改装する。星野リゾートは沖縄・西表(いりおもて)島の宿泊施設を昨年4月、2泊以上しか予約を受けない「連泊専用」にした。

宿泊業は深刻な人手不足を抱えており、連泊が増えれば「チェックイン・アウトや客室清掃といった人手を減らせる」(業界関係者)との効果も期待できるという。

またオーバーツーリズムの影響として観光産業における二酸化炭素排出が指摘されており、排出量の4割を交通が占めるとの調査がある。星野リゾートの星野佳路(よしはる)代表は「排出を下げる努力が重要」と指摘。連泊を通じて一度の観光に占める交通の割合が減り、環境負荷が軽減できると強調している。(田村慶子)