基礎的財政収支の黒字化試算も、総裁選と衆院選を意識し歳出圧力高まる恐れ

AI要約

内閣府から示された試算によると、国と地方の基礎的財政収支が令和7年度に8千億円の黒字となる見通しである。これは小泉純一郎政権が掲げた目標の実現であり、次期衆院選や経済対策などが影響を与える可能性がある。

首相が経済対策で財政運営のかじ取りを試される局面が訪れる中、経済あっての財政を強調している。経済対策では、年金世帯や低所得者への給付が検討されている。

日銀の利上げや政治情勢によっては、国債の利払い費増加なども懸念されており、経済対策と財政黒字化の両立が求められている。

基礎的財政収支の黒字化試算も、総裁選と衆院選を意識し歳出圧力高まる恐れ

国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が令和7年度に8千億円の黒字となる試算が29日、内閣府から示された。小泉純一郎政権が平成13年6月に掲げて以来の目標がようやく実現することになる。ただ、物価高で個人消費は弱含んだままだ。早期の次期衆院選が意識される中、財政支出が膨らむことになれば、PB黒字化はまたもや遠のきかねない。

「経済あっての財政」-。岸田文雄首相がこの日の経済財政諮問会議で述べた文言は、「状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」との政府の考え方を表したものだ。

PB黒字化が現実味を帯びる中、首相が今秋の策定を指示した経済対策で、財政運営のかじ取りを試される局面が早速訪れる。経済対策では、年金世帯や低所得者に対する追加の給付などを検討する。

内閣府は令和7年度予算での歳出効率化により、7千億円のPB改善効果を見込む。ただ、経済対策を実現するための補正予算の執行が7年度にずれ込めば、こうした効果も薄れ、PB悪化につながる。

9月には自民党総裁選が予定され、早期の衆院解散も取り沙汰される。政治サイドからは選挙を意識して、歳出圧力が高まりやすくなる。

日銀が利上げを進めていけば、国債の利払い費の負担も増す。財政への信認が揺らぐ事態が生じれば、金利が急騰し、かえって景気が悪化することにもなりかねない。

「まさに両立させなければいけないということだ」。29日の閣議後の記者会見で、鈴木俊一財務相は経済対策とPB黒字化のどちらを優先するかを問われ、こう応えるにとどめた。(米沢文)