大人気ヘアサロンの「カリスマ店長」が”新人の態度”に大激怒、「社会人として最低ですよ」と言い放ったワケ
オーナー美容師Aさんが業務ミスを指摘した新人スタッフBさんが号泣し、退職したことをきっかけに、パワハラの訴えが出される事例。
Aさんは高い技術力で美容室を経営し、スタッフを採用・育成する際に苦労していた。
現代の労働問題やハラスメント対応は法律だけでなく、マネジメントや人事制度についても幅広い知識と対応力が求められる。
労務相談やハラスメント対応を主力業務として扱っている社労士である私が、労務顧問として社労士として企業の皆様から受ける相談は多岐にわたります。
経済や社会情勢の変化によって労働問題やハラスメントの捉え方も変わり、「明らかにアウト」「明らかにセーフ」といった線が引きにくい時代になりました。
社労士としてグレーゾーンの問題を取り扱ってきた経験では、こうした問題に対処するには労働法だけではなく、マネジメントや人事制度など幅広い知識が必要になります。
静岡県で美容室を経営していたオーナー美容師Aさん(40代・男性)は、スタッフの業務ミスを注意したことがきっかけでパワハラの訴えを受けることになりました。なぜ業務指導が離職を生んでしまったのか、パワハラと業務指導の違いを考えさせられる事例をご紹介します。
Aさんは大手美容チェーンでトップスタイリストを担ってきた美容師で、コンテストにも精力的に出場し様々な部門で入賞経験があります。
その腕前は専門誌でも取り上げられるほどで、業界では知る人ぞ知る存在でした。そんなAさんが独立を考え出したのは35歳のとき。物件選びからローンの審査など様々な条件をクリアして独立店舗を構えたとき、Aさんは38歳になっていました。
開店に当たって、Aさんはスタッフ集めに全く苦労しませんでした。美容師としてのAさんの腕前に惚れ込んでいる後輩美容師が「是非自分も一緒に働きたい」と申し出てきてくれたからです。
Aさんは信頼できる後輩と共にお店をオープンし、開店直後からよい客筋にも恵まれて順風満帆なスタートを切りました。開店から3年後には2号店を持つことができ、オープン当初は2人だったスタッフも10人を超えるまでに成長したのです。
しかし、Aさんのお店に問題が生じてきたのもこのころからでした。最も大きな問題は採用したスタッフがすぐに辞めてしまうことです。
Aさんはある程度の技術を持った美容師とだけ仕事をすることを好みましたが、そのような美容師は独立してしまう可能性が高いため、新卒や、まだ経験の浅い美容師も採用・育成する必要性がありました。
幸い、Aさんの店舗の売り上げは安定しており、求人の額も業界水準よりは高く設定することができました。そのため採用自体には苦労しなかったのですが、なぜか全員半年たたずに退職してしまうのです。
顧客対応を担うのは技術力のある美容師だけだったので、直ちに影響があるわけではないのですが、育てても育てても辞めてしまうという状況にAさんは焦りを感じていました。
そんなある日、事件が起こります。Aさんが新人スタッフであるBさん(男性・20代)のミスを指摘した結果、他のスタッフの前で号泣し、翌日から出勤しなくなってしまったというのです。Aさんはこのスタッフを解雇したいと当職に相談にいらしたのでした。