<知ってトクするモバイルライフ>国内スマホ市場の停滞期に「モトローラ端末」なぜ躍進?

AI要約

日本のスマホ市場が停滞する中で、モトローラが急成長している理由を探る。

モトローラがソフトバンクや格安スマホ事業者との提携を強化し、日本市場においてシェアを拡大している。

親会社レノボとの連携や製品ラインアップの充実も、モトローラの存在感を高めつつある。

<知ってトクするモバイルライフ>国内スマホ市場の停滞期に「モトローラ端末」なぜ躍進?

 国内のスマートフォン市場に停滞感がある中、意外なメーカーが存在感を見せています。ケータイジャーナリストの石野純也さんが解説します。【毎日新聞経済プレミア】

 日本のスマホ市場が伸び悩んでいる。調査会社のMM総研によると、2023年度の「携帯電話出荷台数」は00年度以降、過去最低を記録した。

 そんな中、大きく業績を伸ばしているのが、中国レノボ傘下で米シカゴに本拠地を構えるモトローラだ。

 同社の23年度の国内出荷台数は前年度比で135%増。市場全体が低迷する中、2倍以上の成長を見せた格好だ。家電量販店や格安スマホ事業者などが販売するSIMフリー端末に限ればシェア3位に躍進した。急成長の理由はどこにあるのだろうか。

 ◇23年度に拡大路線

 一つ目は、同社の端末を取り扱う通信事業者が増えたことだ。

 特にソフトバンクがモトローラ製の端末を積極販売しており、23年6月にはサブブランドのワイモバイルが2万円台スマホ「moto g53y 5G」を発売。機能面を考えると破格の安さで話題を集めた。

 さらに23年12月には、モトローラの折りたたみスマホ「motorola razr(レイザー)40s」をソフトバンクが発売。実質1万円以下(分割払い+2年での端末返却が条件)の価格設定を打ち出した。同様の折りたたみスマホはサムスン電子の「Galaxy Z」シリーズが有名だが、価格は15万円ほどと高額。これに対しモトローラは安さを前面に打ち出した形だ。

 一方、モトローラは格安スマホ事業者とも提携し、同分野トップシェアのIIJ(インターネットイニシアティブ)で独占販売する端末も増やしている。大手通信事業者向けの端末とSIMフリー端末、双方で販路を拡大したということだ。

 ◇日本ユーザーの需要に特化

 二つ目は、製品ラインアップが整理され、個性が認知されてきたことだろう。モトローラは22年におサイフケータイや防水・防じん対応の「日本専用モデル」を発売して以降、同様の機能を備えた端末を増やしている。

 これで売れ行きが上向いた。モトローラの日本法人社長、仲田正一氏は、おサイフケータイや防水・防じんについて「商品の競争力確保という意味で重要な要素。今後も搭載していきたい」と語る。

 また、22年に日本での販売を見送っていた旗艦モデルrazrシリーズを23年に再投入できたことも、存在感を高めるのに一役買った。

 拡大路線は24年も続いている。ワイモバイルが23年に発売した2万円台スマホ「moto g53y 5G」の後継機が7月に発売。同じくワイモバイルが取り扱い、「非常に好調に伸びている」(仲田氏)という。

 さらに23年にSIMフリーモデルのみの投入だった「edge(エッジ)」シリーズも、ソフトバンクでの販売が始まっている。中位機の中では性能が高いシリーズで、わずか19分で充電が完了することがうりの「motorola edge 50s pro」は、販売開始時から実質12円(分割払い+1年での端末返却が条件)の価格を打ち出した。

 6月に米ニューヨークで発表した折りたたみスマホの最新モデル「razr 50」シリーズも今後、日本で発売する予定だ。

 ◇親会社レノボと連携

 もう一つ、注目したいのが親会社レノボとの連携だ。23年はスマホの国内市場が停滞しただけではない。富士通グループにルーツを持つ携帯電話メーカー、FCNTが経営破綻したほか、事業の撤退や縮小を表明するメーカーも相次いだ。

 このうちFCNTは現在、レノボが傘下に収めており、部材調達などの一部をモトローラと共通化していく予定だ。「お互いのアセット(資産)を相互活用することも考えていきたい」(仲田氏)としており、連携を深める考えを示している。

 FCNTがもともと販路を持つ大手通信事業者3社と、モトローラが関係を強化する意味でもこのグループ内連携はプラスに働く。モトローラの存在感は今後、さらに高まることになりそうだ。