ワインの常識を変えた缶ワインはなぜブームになったのか? 缶でワインを飲むことの最大のメリットと市場拡大となった「思わぬ理由」

AI要約

ワイン市場において、酒税改正や円安の影響で値上がりしている中、缶ワインが注目を集めている。マクロミルのデータによると、甘味果実酒部門で缶入りスパークリングワインが上位を占め、需要が高まっている。

モンデ酒造株式会社は、10年前から缶ワインを販売しており、最近では販売実績が3倍に増加している。初期は苦戦したが、徐々に認知度を高めてきた。

同社のボトル缶ワインは、スクリューキャップを採用している点が画期的であり、列車内などでも気軽に楽しめる工夫がされている。

ワインの常識を変えた缶ワインはなぜブームになったのか? 缶でワインを飲むことの最大のメリットと市場拡大となった「思わぬ理由」

酒税改正や長期化する円安の影響で値上がりしているワイン市場において「缶ワイン」が存在感を高めている。なぜ、注目を集めるようになったのか。創業72年の山梨県のワイナリー「モンデ酒造株式会社」の営業部部長代行、高橋正澄さんに缶ワインのブームについて聞いた。

株式会社マクロミルから6月に発表された2024年上半期の「食品」と「日用品」のカテゴリー別購入金額の伸びから振り返る「2024年上半期市場規模拡大・縮小ランキング」(※1)によると市場規模拡大ランキング【食品部門】の第1位は「甘味果実酒」で、前年比144.9%となっている。

中でも、缶入りスパークリングワインが【食品部門】の上位を占め、同カテゴリーをけん引しているという。

缶ワインの需要の高まりを感じるデータだ。

「弊社でも、缶ワインは10年前の2013年と比較すると直近の販売実績は3倍アップしていて、今年に入ってからもさらに缶ワインの注目度がアップしていると感じています」(高橋さん、以下同)

缶ワインは、海外の缶ワインが輸入されるようになったり、ワイナリーやメーカーが独自で開発しコンビニなどで販売されたことで、徐々に認知度を高めていった。

「弊社では、2008年10月にボトル缶ワイン第一弾として飲料用カップ付きのニューボトル缶ワイン、プレミアム缶ワインを販売開始しました。

開発のきっかけになったのがJR東日本社から『列車内で提供する小容量ワインの開発』の提案でした。その後、JR東日本社、缶製造の大和製罐社、モンデ酒造の3社合同プロジェクトが発足。

当時はJR東日本管轄の特急列車内でのワゴン販売、駅売店にて販売されていました。列車内で気軽にワインを楽しめるように飲料用のカップ付きというのが特徴です」

このボトル缶ワインが画期的だったのが、スクリューキャップを採用したことだ。

「当時、缶ワインと言えばプルトップタイプが主流でしたが、世界ではじめてスクリューキャップのボトル(ニューボトル缶)を採用したのが我が社のこの商品です」

キャップがあることで、列車の振動によってこぼれる心配をなくし、気軽にワインを楽しめるという細かい配慮がされた商品だ。

「列車内での販売だけでなく、県内観光施設や酒販店に缶ワインを提案しましたが、発売当初はアルミ缶特有の缶の匂いが『ワインの風味を損なうのではないか』などマイナスのイメージが先行し、なかなか受け入れられず苦戦を強いられました。それでも、車内販売では好評をいただく声もあり、徐々に缶ワインの認知が広がってきたように思います」

※1マクロミルの消費者購買履歴データ「QPR™」をもとに発表。

「QPR™」は、全国3.5万人の消費者パネルから毎日の買い物履歴を収集し、POS(販売時点情報管理)データでは分からない購入者属性や、アンケートによる購入シーン・理由などを追跡できる消費者パネルデータ。なお、ランキングのカテゴリーはJICFS(JANコード商品情報データベース)の文言に統一し、ランキングのための集計データは2024年1月1日から5月15日までを用いている。