経済効果は810億円! 宇都宮LRT「西側延伸」が引き起こす“都市再生”の大シナリオ、「JRと東武が近くなる」なんて序章に過ぎない

AI要約

宇都宮市の次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT」の西側延伸計画が進行中であり、これにより市の交通インフラが大幅に改善される見込み。

計画では大谷観光地まで延伸する構想もあり、観光客の誘致にも繋がる。2021年頃までに年間120万人の観光客を目指している。

バスネットワークの再編も計画されており、LRTを中心に整備されたバス路線が都市全体に広がることで、公共交通の利便性が向上する予定。

経済効果は810億円! 宇都宮LRT「西側延伸」が引き起こす“都市再生”の大シナリオ、「JRと東武が近くなる」なんて序章に過ぎない

 宇都宮市の次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT」の西側延伸計画が本格化している。この計画では、JR宇都宮駅と東武宇都宮駅がLRTで結ばれ、利便性の向上が期待されている。

 しかし、この整備は計画の一部にすぎない。本稿では、LRTを起爆剤に宇都宮市がどのように街の抜本的な改善に取り組んでいるのか、改めて紹介する。

 現在の西側延伸計画では、JR宇都宮駅西口から教育会館前までの約5kmを整備することになっている。現在のところ、概算事業費は約400億円で、開業は2030年代前半を予定している。

しかし、計画はこれで終わりではない。まだ構想段階だが、LRTはさらに西の「大谷観光地」まで延伸する計画だ。大谷観光地は、特産品である大谷石の採掘場など観光施設が集積するエリアである。宇都宮市は2018年に「大谷地域振興方針」を策定し、2030年頃までに

「年間120万人の観光入込客数」

を目標に掲げている。LRT西側延伸はこの目標達成に大きく貢献すると期待されている。

 西側延伸計画が完成するとどうなるか。地図を見れば一目瞭然だ。LRTは市の中心部を通り、西は芳賀町の工業団地やニュータウンとして開発中の「ゆいの杜」付近を通る。西は大谷観光地のある城山地区に達する。LRTの計画がすべて実現すれば、宇都宮市はLRTを幹線とし、その停留所から路線バスネットワークが伸びることで、市内のどこへでも公共交通で行くことができるようになるのだ。

 LRTを契機としたバス網の再編は、特に期待される部分だ。「宇都宮市立地適正化計画」2021年5月版では公共交通施策のうち、そのネットワーク整備に次の方針を示している。

 LRTを契機としたバスネットワークの再編は、計画のなかでも特に有望な部分である。2021年5月版の「宇都宮市立地適正化計画」では、公共交通施策のうちネットワーク整備について、次のような方針が示されている。

●基幹公共交通

 都市の骨格となる鉄道とLRTを基幹公共交通として位置付け、拠点やその沿線における居住や都市機能の誘導・集積などにより、高水準のサービスを提供

・南北方向:JR宇都宮線、東武宇都宮線

・東西方向:東西基幹公共交通(LRT)を導入

●幹線バス路線等

 沿線地域の特性に応じ、基幹公共交通軸と連携して拠点間を結ぶ幹線バス路線等のサービス水準を維持・向上また、LRTや地域内交通等と連携した幹線・支線からなる持続可能なバスネットワークを整備(バスネットワーク再編)

●地域内交通

 郊外部地域などで地域の実状や交通需要に応じた多様な方策を検討し、生活の足の確保のため乗合タクシー等の地域を面的にカバーする地域内交通を導入既導入地区については、LRTやバス路線との連携強化を図り利便性向上

 具体的には、現在JR宇都宮駅など市内中心部から放射状に伸びているバス路線を、地域内のLRT停留所を起点・終点とし、地域内を循環するバス路線に変更する。地域内をバスで移動し、LRTに乗り換えて都心や駅にアクセスする――というものだ。