夜行列車が廃止された「5つの理由」 鉄道の旅が見直されれば、復活の可能性はあるのか?

AI要約

国鉄分割民営化前年の自民党の意見広告には、国鉄分割民営化後の懸案事項に関して6つの公約が掲載されていた。

現在、JRグループからはブルートレインが姿を消して久しいが、かつては夜行列車を続ける意欲があり、一定の支持を集めていた。

1998年以降、定期夜行列車は減少傾向にあり、ブルートレインの運行もほぼ終了している。

夜行列車が廃止された「5つの理由」 鉄道の旅が見直されれば、復活の可能性はあるのか?

 国鉄分割民営化の前年の1986(昭和61)年5月22日、自民党は全国紙に意見広告を出した。それは、国鉄分割民営化後の懸案事項に関して不利益がないことを「公約」したものだった。意見広告に明記された公約は次の六つである。

●民営分割 ご期待ください。

・全国画一からローカル優先のサービスに徹します。

・明るく、親切な窓口に変身します。

・楽しい旅行をつぎつぎと企画します。

●民営分割 ご安心ください。

・会社間をまたがっても乗りかえもなく、不便になりません。運賃も高くなりません。

・ブルートレインなど長距離列車もなくなりません。

・ローカル線(特定地方交通線以外)もなくなりません。

連載5回目となる本稿では、「ブルートレインなど長距離列車もなくなりません。」について、国鉄・JRの鉄道線(連絡航路・バスを除く)の夜行列車に焦点を当てて再考する。果たしてこの公約は守られているのだろうか。

 なお、本稿ではすべての夜行列車を網羅しているわけではなく、「現在」というのはこの記事が掲載された時点の情報であることをあらかじめ断っておく。

 JRグループからブルートレインが姿を消して久しい――。

 ブルートレインとは、JRの前身である日本国有鉄道(国鉄)からJR各社に引き継がれた青色塗装の客車による寝台列車のことである。2015年3月14日のダイヤ改正で、最後まで残っていた「北斗星」(上野~札幌)が定期運行を終了した。また、同じ区間を走っていた「カシオペア」も、2016年3月20日に定期運行を終了し、現在は団体専用列車(募集型企画旅行)として運行されている。

 ただし、北斗星はJR発足後の1988(昭和63)年3月13日に、カシオペアは1999(平成11)年7月16日にそれぞれ運行を開始している。現在、定期夜行列車として唯一残っている「サンライズ出雲・瀬戸」(定期列車の運行区間:東京~出雲市・高松)も、運行開始は1998年7月10日である(前身の寝台特急「出雲」「瀬戸」は国鉄時代から運行)。JR初期には、まだ各社に夜行列車の運行を続ける意欲があったといえる。

 国鉄からJRに引き継がれたブルートレインの最後は、2014年3月15日のダイヤ改正で定期運行を終了した「あけぼの」(上野~青森)だった。あけぼのは、東北新幹線新青森開業によって廃止が危惧されたが、開業後も存続した。これは、

・新潟県北部・山形県・秋田県・青森県の各都市を、乗り換えなしで首都圏と結ぶ利便性

・2段式開放型B寝台の設備を、乗車券と指定席特急券だけで利用できる「ゴロンとシート」

・女性専用の「レディースゴロンとシート」(浴衣、枕、掛け布団、シーツは省略)

といった設定があったため、一定の支持を集めていたと考えられる。